露津まりいさんの連載サスペンス小説 『贋物師-フェイク・マスター』 (第17回) をアップしましたぁ。贋作師の親玉、深山さんの 『旧侯爵家の秘宝なんだ。疑われるとすれば、物じゃない』 という言葉は、人間の心理を見透かしていますねぇ。露津さんによると、骨董で騙される時は、たいていは人に騙されているそうです。『モノに騙される人って、そうとうな目利きですよ。でもそれじゃあ小説にならない』 と露津さん (笑)。
骨董好きといっても本当にモノが見えている人は一握りだそうです。言葉は悪いですが、目利きだと思いこんでるだけですね。でも自分は目利きだと信じこんでいればいるほど騙されやすい。骨董屋が順番に品物を見せていく。安物からちょっと手が出ない高いモノの順番です。素人目利でも、安物は何度も類似品を見たことがあるから真贋はわかる。だからホンモノを見せる。でも高いモノには贋作を混ぜておく。相手は珍しいモノ、高価なモノは図版でしか見たことのない素人です。悪い骨董屋さんだと、どのレベルで 『おお素晴らしい』 と本気で食い付いてくるかによって、騙し方を変えるそうです (笑)。
あ、小説に 『ご承知のように澄能は新興華族ですから、まあ、いわば地下の者です』 という言葉がありますが、日本では華族は公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の五階級に分類されます。澄能家は男爵家で、ご維新以降に勲功があって爵位を授けられた新興華族です。地下 (じげ) の者は本来は昇殿資格のない下級官吏を指しますが、ご維新以降は公侯家が新興華族を揶揄する時にも使われたようです。
文筆家の白洲正子さんの実家・樺山家は、元々は御維新華族で男爵家です (後に伯爵)。幼い正子さんが父親に連れられて京都の冷泉家を訪れた際に、二人を家の中に通した書生が冷泉家御当主に、『地下の者が参りました』 と言ったというエピソードを書き残しておられます。正子さんのお父様、伯爵・樺山愛輔さんは、『地下の者ってのはよかったな』 と苦笑しておられたそうです (笑)。
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