星隆弘さんの 『Ongaku & Bungaku by Kingyo - 歌詞と詩歌 No.002 無時間の川、わたしの不在 - 『宿はなし』 by くるり』 をアップしましたぁ。京都出身の岸田繁さんに率いられた人気バンド、くるりさんの曲を取り上げておられます。星さんはくるりを 『特別じゃない欲望を歌う共振のバンド』 と要約されていますが、確かにそういふ感じがしますねぇ。
星さんが論じておられるように 『宿はなし』 には 〝私〟 という人称が登場しません。その意味でちょ~日本的な歌詞ですね。『宙ぶらりんの千のこころは/さざれ石すら動かせず』 といふ歌詞には、かすかに 〝君が代〟 の反映があります。ところどころに文語体が使用されているのもこの歌詞の特徴であります。
また 『宿はなし』 の歌詞には物語性はありません。歌い手の心象が、具体的な風景の描写として描かれている。その意味で 『宿はなし』 は文字通りの 〝ホームレス〟 という意味ではなく、帰属する場所 (トポス) がないといふ意味だと思われます。
星さんは 『主観的人称がうたうことにあまりに慣れきっている我々に、本作は物思いの主体を 「千のこころ」 にみる可能性を残している』と 論じておられますが、人称も物語性も作者の強い主張(思想・観念)も排除することで、多くの人が共感できる、よりどころのない不安な心を表現することに成功しているやうですぅ。
■ 星隆弘 『Ongaku & Bungaku by Kingyo - 歌詞と詩歌 No.002 無時間の川、わたしの不在 - 『宿はなし』 by くるり』 ■