星隆弘さんの演劇批評 『星隆弘の難しい演劇評』 『No.011 『不変の価値』 (F/T12・その6)』 をアップしましたぁ。石川は上演を見ていないのですが、集団:歩行訓練さんの 『不変の価値』 はすんごい劇だったやうですねぇ。星さんは 『本作は実験的演劇よりも、演劇を実験するという意味で実験演劇である』 と書いておられます。フェスティバル/トーキョー 12 で上演された作品はどれも意欲的なものですが、『不変の価値』 はその掉尾を飾るのにふさわしい作品だったようです。
歩行訓練さんは、演劇に 〝商品〟 と 〝貨幣〟 の概念を持ち込んだようです。演劇は通常は最初にお金を払って完成された劇を見物して楽しむものです。お金を払ってしまえば少なくとも上演中は劇の出来不出来を気にすることはない。しかし歩行訓練さんは、演劇は貨幣と交換し得る商品であることを演劇化したようです。一種の掟破りですね。観客に観劇料を還付して500 円玉を握らせ、俳優に演技させることを要求すれば、必然的に劇と金銭的兌換価値の関係が露わになります。しかし上手い演技でも下手な演技でも、払った金とは釣り合わないでしょうねぇ。
問題の焦点は、当然のことですが、金銭とは兌換できない芸術の 『不変の価値』 とはなにかということになります。演劇に限らず、芸術のジャンル全般の本質的課題として、このアポリアには決して明確な答えはないはずです。詩人や小説家、画家など孤独に仕事をする作家は、ある日突然、自分の作品に値段がつく不思議を知っています。しかしたいていの演劇は最初から金銭と引き替えに上演される。その意味で演劇は、最も資本主義の原理に根ざした芸術かもしれません。
■ 星隆弘 演劇批評 『星隆弘の難しい演劇評』 『No.011 『不変の価値』 (F/T12・その6)』 ■