谷輪洋一さんの文芸誌時評 『No.010 すばる 2013年04月号』 をアップしましたぁ。鹿島田真希さんの 『百円の啓示』 を取り上げておられます。鹿島田さん、面白い作家さんですよぉ。日本ハリスト教会の信徒で、ヨーロッパ文学を系統立って勉強されています。デュラスに代表されるエクリチュール・フェミニンの影響を受けているとも言われますが、不肖・石川が読ませていただいた感じではちょっと違うかなぁ。
鹿島田さんの作品には、原罪に近い罪の意識、逃れようのない過ちの意識があるように感じます。ハリスト教徒であることと関係があるかどうかはわかりませんが、それが小説の社会性につながっているように思います。表面的にはエクリチュール・フェミニン的小説文体ですが、女性性を前面に押し出しているわけではない。むしろ社会の中での女性の原罪意識を引き受けてる感じです。
もちろん女性にしか書けない小説世界だと思います。でも男社会を仮想敵とした、被抑圧者としての女性という感じが強いかな。その観念が宗教に流れれば原罪になりますし、社会問題として捉えれば上野千鶴子さん的なフェミニズムになるのではないかと思います。いずれにせよ安定して物語を紡ぐことができる作家さんです。江國香織さん的小説読者とはまた違う、女性読者層を抱えておられる作家さんだと思います。
■ 谷輪洋一 文芸誌時評 『No.010 すばる 2013年04月号』 ■