池田浩さんの文芸誌時評 『 No.005 小説新潮 2012 年 10 月号 』 をアップしましたぁ。みなさん 『時代小説』 と 『歴史小説』 の違いについてお考えになったことはありますでしょうか。あ、これは文学金魚的なジャンル分けであって、文学界で一般的な区分けではありません。岩波書店から刊行された森鷗外著作集の歴史物が 『歴史小説』 と題されていたので、だいぶ前に谷輪洋一さんが文学金魚の会議で 『時代小説』 と 『歴史小説』 は違うのかという議論を始められたのです。
30分ほどの議論のあと、文学金魚の統一見解として 『時代小説』 と 『歴史小説』 は 『違う』 という結論が出ました。『時代小説』 は簡単に言えば日本版の一種の SF です。様々な現代的制約を取り払うことができる過去において、作家が自身の 『夢』 を語るというタイプの小説です。これに対して 『歴史小説』 は、現代よりも強い制約が働く過去の時代を設定して、人間の本質を描くというタイプの小説です。文学金魚批評陣の判断では司馬遼太郎さんや藤沢周平さんを始め、ほとんどの作家さんは 『時代小説』 作家であり、『歴史小説』 を書いたのは森鷗外以外あまり見当たらないということでした。
文学金魚批評陣の判断が正しいかどうかは別として、一つの議論にはなると思います。今、文学出版は経済的にはかなりの程度時代小説の売上に依存していますが、なぜこんなに時代小説が簡単に書けるのか、量産できるのかは、経済とは別の次元で考えなければならない問題だと思います。売れればなんでもいいというのなら、それはもはや文学ではありません。ゲームなどと同様の商品として小説を考えるべきなのです。
■ 池田浩 文芸誌時評 『 No.005 小説新潮 2012 年 10 月号 』 ■