谷輪洋一さんの文芸誌時評総評 『No.002 小説現代 2012年08月号』 をアップしましたぁ。伊集院静さんの『ノボさん――正岡子規の夢』を取り上げておられます。伊集院さんは泣く子も黙る売れっ子作家さんです。ちょいコワモテでもあるようで、最近では若者におくる言葉の本も出しておられます。お父さんといふより、ちょいと頑固カミナリオヤジといった雰囲気のある作家さんであります (笑)。
僕は伊集院さんの作品は、銀座を舞台にしたものを何作も読んでいて、あれはすんごいなぁと思ったのでした。なんていいますか、よく遊んでおられる。いや違った、よく取材しておられる (笑)。あれだけ銀座の機微を把握するのは尋常なことではありません。将来、銀座小説集が作られることがあったら、伊集院さんの作品が何作も収録されることになると思います。
ところで伊集院さんの作品は正岡子規を主人公にしています。子規の代表句は 「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」 ですが、この句は夏目漱石の 「鐘つけば銀杏ちるなり建長寺」 をヒントにしたのではないかと言われています。俳句ではよくあることです。
中村草田男に 「降る雪や明治は遠くなりにけり」 がありますが、この句は志賀芥子の 「獺祭忌明治は遠くなりにけり」 をヒントにしたと考えられています。「獺祭忌」 は子規の命日であります。ちょっとした差なのですが、読後感が決定的に違いますね。俳句は恐ろしい文学であります (笑)。