『第二楽章』(連続9回)
NHK総合
火曜 22:00~
佳作の多いドラマ10シリーズの一作である。そしてシリーズは、30代以上の女性をターゲットとしているものが多い。
昔、バイオリニストであった奈津美(板谷由夏)は、今は専業主婦として暮らしている。かつての親友、茉莉(羽田美智子)はシカゴでコンサートマスターを務めていたが、古巣である東京のオーケストラに帰ってくる。友人たちは喜んで迎えるが、奈津美は接触しようとしない。かつてバイオリニストとしてポジションを争っていたとき、奈津美は妊娠し、それを茉莉に利用されて敗北したのだった。
そのわだかまりを乗り越え、再会して抱き合う二人。が、茉莉が本当に会いたかったのは、奈津美の夫の一登(谷原章介)ではなかったのか…。というところから期待される、どろどろ三角関係サスペンスみたいなものから、しかし別のところへ物語はずんずん向かっていった。
どうやらドラマは、本気で女同士の友情とやらを描こうとしているようなのだ。二人は怒鳴り合い、罵り合い、しかしそれを経ても互いを思いやり、深い友情で結ばれている、という。長い歳月が過ぎても失われなかった記憶とともに。
うーん。うーん、なのだが、これって数字はどうなんだろうか。NHKだから、数字より質を問えるのはありがたいが。すごーく高くなることはなさそうだが、結構、底固いかもしれない。
世の女性には2種類いて、いわゆる女子会ノリを大切にしたいのと、そうでないの。つまり女同士、という概念に特権的なものを認めるという向きは、必ず数パーセントは存在するのだ。え? 「第二楽章」の数字、6%弱ぐらい? じゃ、そのぐらい。6%ぐらいは存在する。
女子会ノリを好まないという女子はさらに2つに分派し、合コンノリが好きなのと、そっちも嫌いなの。私は後者なので、何も言うべきことはないっちゃないが、合コンノリが好きな女子はいわゆる肉食系。女子会なんてエサのないところには行かないが、戦利品報告会という癒しの場として利用されることもある。
奈津美は、いったん友情が戻ると、独り身の茉莉のために献身的に尽くすようになる。茉莉が病気だと聞いたら、ショックで立ち直れなくなるのでは、と周りが心配するくらいだ。ついには夫から釘を刺される。
ようするに、こういうときの女の献身というのは、自身の空虚を埋めているに過ぎない。まあ、あらゆる献身はそうかもしれないけど。個人的には、怒鳴り合っても、罵り合っても「ちょっと休憩」とか言って、元の鞘に収まるってのが好きじゃない。甘ったれてると思う。大人というのは、罵り合ったら縁は切れるのだ。そういう覚悟すらない罵り合いを視聴させられるのは、時間の無駄だ。
といったことであっても(そう言ったわけではないが)谷原章介の美声で聞くと、すごく音楽的。奈津美は失ったバイオリンを、この夫の声で埋めてたんだ。なら、いいじゃん、とも思える。「のだめ」とか、音楽ドラマって美声の男優をよく使うなあ。
山際恭子
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■