サキ フジテレビ
火曜 22時~
『美しい隣人』の続編である。前作では「女を不幸に陥れる女」だったが、今回のターゲットは男で、しかも次々と仕留めてゆくらしい。キーワードは「優しい女」。男の望みを叶えてくれる女であり、その結果として男は破滅してゆく。
ドラマの感じとしては成功で、特に仲間由紀恵にとってハマり役と言える。受けるのはイメージ的になかなか勇気がいったと思うが、くっきりした印象の女優さんだけに、かなり特徴的でしかもピタッとくる役でないと、というきらいがある。『トリック』のようなコミカルに落とすかどうかはともかく、基本はスリラーのタイプだ。が、漫画タッチでない、こういったドラマでは演技力もそこそこ光る。
『美しい隣人』も、この『サキ』同様に何となく怖いし、ついつい見てはしまったのだけれど、全体的な結構というか、テーマについてはちょっとツメが甘かったように思われる。
『隣りの女』(トリュフォー!?)であるサキが女を追い詰め、破滅させようとする動機が中途半端に重い。自分の子供が死んだとき、女の子供だけが助かり、しかも「死んだのがうちの子でなくてよかった」と言ったというなら、サキでなくても恨みに思う。サキの性格の怖さをもってスリラーにするなら、むしろ動機などなく、まったくの口実に過ぎないと割り切れる方が納得できた。結果、最終回は収拾がつかず、サキの生死すらよくわからないものとなっていた。
で、今回はそのリベンジを期待したい。まあ、生死がはっきりしなかったサキだが、生きていたというわけだ。男を次々と破滅に追いやり、そのたびにその男の生まれた年のワインとステーキ(付け合わせなし、肉だけ)で祝う姿は、生々しくていい。
このサキさんが、男たちの何に対して「復讐」してるのかなんて、一所懸命こしらえた話を聞かされなくてもいいのだ。こういう女はいる、ってそれだけで十分。ついでに前作の子供うんぬんも、でっち上げだったとバクロしてもらいたい。子供を死なせた母親なんて、何をやっても結局はカワイソウに墜ちてしまって、全然コワくない。まあ、「子供が」と言いさえすれば何でも通る社会の方がコワいぐらい。
実際「サキ(マイヤー)の法則」ってのは、幸福の全体量は決まっていて、誰かが不幸になると、そのぶん誰かが幸福になる、ということらしい。だったら男たちの生命を食いつくして、どんどん幸せに、ますます美しくなるということでいいんじゃないか。生命保険を得て、というのだと現実によくある事件で、つまらないが。
実益もないのにやる愉快犯という範疇に入ってしまうことになるが、そこに「法則」についての強い信念と、快楽の裏付けが必要になる。前作のような「不思議だわ。あなたを不幸にしたのに、わたし幸せを感じない」的な、教育的セリフは要らないと思う。
テレビドラマが勧善懲悪をどこまで排除できるのかが、見どころかもしれない。弱肉強食をきっちり描くことも、非常に啓蒙的だと思うのだが。
山際恭子
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■