一.ヴラジーミル・ヴィソツキー

まずは前回の続き、というかボリューミーになってしまいカットした部分をリサイクル。
プーチンも聴いていたという使用済みレントゲン写真製の「肋骨レコード」。ビートルズ、プレスリー以外のラインナップにはソ連時代のシンガー・ソングライター、「ソ連の良心」「ソ連のボブ・ディラン」とも呼ばれるヴラジーミル・ヴィソツキー。日本では空耳曲の印象が強いかも。当時、検閲によりラジオやテレビ出演はほとんど禁止されたにもかかわらず、「肋骨レコード」やカセットテープの原型である「磁気テープ」でヴィソツキーの歌は流通し拡散されたというエピソードがある。つまり情報統制を潜り抜ける重要な抵抗文化。また興味深いのは肋骨レコード経験者のプーチンが、本来は権力や抑圧を風刺していたヴィソツキーの歌詞を度々演説の際に引用していること。国家の立場を強者から弱者へひっくり返すというダイナミックなやり口。即ち、西側諸国に弾圧されている我がロシア! 実は昨年、ロシア文化省のバックアップのもと、彼のデジタルアバターを使ったコンサートが開催されている。ちなみに7,000席は完売。やはりダイナミック。
文豪のエピソードで好きなのは、太宰のアレ。そう、「走れメロス」執筆のきっかけとなった例のアレ。まず熱海で執筆中の太宰の金が尽き、太宰妻に金を託された檀一雄が東京から来る。しかし、その金で二人ドンチャン騒ぎして借金激増。これだけでもダイナミックだが、やはりあの人は器が違う。なぜか檀を人質として熱海に残し東京へ。すぐに戻る、と言ったのに五日経過。借金取りと共に檀が上京すると、太宰は井伏鱒二宅で将棋中。激昂する檀一雄に放った一言が「待つ身がつらいかね、待たせる身がつらいかね」。うん、堪らん。ちなみに檀一雄、別のトラブルにも巻き込まれている。当時居候していた坂口安吾が妻に「ライスカレーを百人前」と命じ、近所の店二軒に運ばせた。実際に届いたのは三十人前らしいけど、ダイナミックなことに変わりはない。その二軒のうちの一軒、食堂「T」は今も営業中。勿論老舗。外観も非常に美しく、そりゃあ閉店間際だったけどフラフラと入ってしまいます。大瓶を頼むと傍らにはかっぱえびせん。灯台下暗し的ナイスチョイス。肴はアジフライ200円を二枚。因縁深い檸檬を絞った衣厚めの熱々をいただきながら、天然レトロな雰囲気をたっぷり堪能。次回は是非カレーをいただきましょう。
【オオカミ狩り/ ヴラジーミル・ヴィソツキー】
二.フィフス・ディメンション

皆様もよくやるパソコン前でのウトウト。年々増えているような気はするけれど、この間もダイナミックなヤツをやらかした。計四時間。で、起きて暫くの寝ぼけ状態時に流れていた音楽をスライだと認識したけど、よく考えると知らない曲。あれは一体、と探したところ答えはコーラス・グループ、フィフス・ディメンション。なーんだ、とスルーするにはどれも良い曲。で、期せずして聴き直しがスタート。無論存じ上げてはいたけれど、そうか成程。甘い旋律、ダイナミックなアレンジ、濃いめのコーラス、リズムは気持ちファンキー。つまり好きなモノの寄せ集め。お馴染みのメドレー曲「輝く星座~レット・ザ・サンシャイン・イン」(’69)でもそのテイストは確認できるが、アルバム単位で聴くと効き目抜群。バンドだと思っていたほどノーマークだったことを後悔しつつ、ウトウトしてみるもんだなあ、なんて無反省。あのメドレー曲はロック・ミュージカル『ヘアー』使用曲をつなげたもの。歴史的イベント『ウッドストック』の映像でも、観客が自然発生的に合唱しているのが確認できる。ちなみに紆余曲折を経てグループは現在も活動中。
さっきの天気予報で来週38度の日があると知る。嘆いても仕方ない。毎年のことなので対策もある。出不精一択。極力出歩かないように。とはいえ呑まなきゃいけないから大変だ。なるべくダメージが少ないようにと考えた結果、やはり店が密集しているエリアになる。たとえば西荻窪。駅のこっちも向こうも店には困らない。まずは居酒屋「E」、あっち側にある北口店でウォーミングアップ。ここは私の好きなモノが詰まっている。ハイボール190円を三杯、やきとん95円を三本。お勘定は850円。一の位を切り捨てまでしてくれて、言うことありません。無論懐に優しいだけではなく、味、雰囲気ともに素晴らしい。さあ、次の店はどうしよう。万が一ハズレだったら戻ってこなければ。
【 Aquarius / Let The Sunshine In / 5th Dimension 】
三.ロマーンズ

運よくハズレることなく数軒フラフラ。今日はこれくらいにしといたるわ、と嘯いて目に入ったのは建物二階のワインバー「A」。なんとなくラフな感じが気になり足を踏み入れると、店内は更にラフ。ガランと広いスペースにスタンドテーブルやソファーがぽつんと。良い意味で殺風景。壁には貸切予定のスケジュールが貼ってあり、マジック書きで名前はイニシャル。いやあ、堪らん。マスターもいい感じにラフ。酒精強化ワインのマルサラは切らしていたが「安いシェリーならありますよ」と。確かに安くワンコイン。早々に再来店決定しつつ呑んでいると、常連客との会話が聞こえてきた。どうやらそろそろ閉めるようで、お別れパーティーの相談中。成程、本気の殺風景だ。「グラスも全部買ってくれないかな?」なんて話を肴にもう一杯。次回まだやっていたら是非寄らねば。
実はラモーンズが沁みてきたのは結構最近だったりする。頭では分かってるんだけど……という状態が結構長く続いていた。変化のきっかけはガールズ・トリオバンドのロマーンズ。オリジナルも良いけれど、やはりラモーンズの日本語カバーが素晴らしい。とにかくすべての音がダイナミックに殺風景。少年ナイフにも全曲カバーのその名も『大阪ラモーンズ』(‘11)という傑作アルバムがあるが、殺風景なのは断然ロマーンズ。彼女たちのヴァージョンを聞くことで、ようやく本家の楽しみ方が分かった次第。
【電撃バップ / ロマーンズ】
寅間心閑
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