遠藤徹 連載小説『虚構探偵―『三四郎』殺人事件―』(第29回)をアップしましたぁ。ツンデレ美彌子ちゃんの魅力爆発ですな(笑)。漱石の小説で青春小説と言えるのは『坊ちゃん』と『三四郎』だけです。あとはだいたい既婚者小説。あ、『三四郎』に続く『それから』が独身から既婚に移行する主人公の物語です。ま、結婚はさして問題ではない小説ですが。
『虚構探偵』の二人がヴァーチャルリアリティで詳細に辿るように、『三四郎』という小説での美彌子の描き方はかなり批判的です。作家漱石が美彌子のような女性に対してあまり良い印象を持っていなかったからですね。ただま、それとは別に、美彌子ちゃん、なかなか魅力的で特に女性に人気がある。そのあたり、完全に批判的視線ではなく小説内で美彌子ちゃんを野放しにしたところが漱石の偉いところです。
漱石は『三四郎』の前に『虞美人草』を書いていて、これがまー、見事な失敗作です。文豪だから常に優れた小説を書いているわけではござんせん。朝日新聞入社後の第一作で肩に力が入りすぎてクソボール球を投げちゃったんですね。『虞美人草』の女主人公・藤尾は美彌子ちゃんタイプで最後に天罰が下って死にます。漱石先生、見事に同時代の若者心理を捉え損なった。『三四郎』はその仕切り直し小説でもあります。
■遠藤徹 連載小説『虚構探偵―『三四郎』殺人事件―』(第29回)縦書版■
■遠藤徹 連載小説『虚構探偵―『三四郎』殺人事件―』(第29回)横書版■
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