情報 7days ニュースキャスター
BS系列 土曜日22:00~
ビートたけしと安住アナウンサーをメイン司会者とする。情報7days とある通り、週一回の情報番組である。ニュース番組ではない。
とはいえ安住アナウンサーは、瞬間的にはニュース番組然として JNN ニュースを読み上げる。そのときだけはニュース番組と見紛う。それで、ニュースキャスターはというと、それらしき存在は見当たらない。ただ、ビートたけしがそばで放言している他は。
つまりは「ニュースキャスターとは誰か」という命題があるのだ。しっかりと無表情でニュースを読み上げるアナウンサーと、常に本気でないわけではないが、国民的人気のあるタレントの放言。双方にかなりの知性があるものの、その谷間のようなところに「ニュースキャスター」が不在している。
典型的かつ理想像としての「ニュースキャスター」のイメージは、いまだあの久米宏を超えない。と言うより我々は久米宏を見て、初めてニュースキャスターなる新種の職業を理解した、と言ってもいい。田丸美鈴も今思えば立派なニュースキャスターだが、年配の男性には単なる「生意気な女子アナウンサー」に映っていた時期も長かったろう。
有能なニュースキャスターは、魅力的で危険な存在だ。民衆を扇動し、世論を左右する。が、果たして今、民衆はどこにいるのか。この番組のニュースキャスターの不在とは、かつてはいた民衆の不在を意味してはいないか。
この情報番組が、世論を左右するようなニュースキャスターを擁する報道番組のパロディであるとすれば、何となく腑に落ちる。
安住アナウンサーの知性は嫌味の域を出ないことをもとより選択しているし、何と言ってもサラリーマンであることを大前提としている。大それたことに対して、「大それたことを」と言うスタンスを自己にも他者にも取る。小さき者の、しかし知的ではある視線である。
映像の創作者でありコメディアンでもあるビートたけしの振る舞いは、よりいっそうパロディ的になり得る。が、「ニュースキャスター」という存在はその眼中にはなさそうだ。オープニングトークの「こんな○○はイヤだ」にせよ「週間実は…!」にせよ、あるいは「たけしの三面記事新聞」にせよ、ターゲットにされているのはニュースキャスター的な態度ではなく、「報道」そのものである。
そう言えば、である。この番組の枠はかつての「ブロードキャスター」のものだ。とすれば「キャスター」の言葉を引き継いだのみで、番組名にとりたてて意味はないのかもしれない。「噂の東京マガジン」をはじめ、TBS はこの手の情報番組になぜか「編集」、「出版」のイメージを重ね合わせることを好む。落ち着いた雰囲気が出て、長寿番組になるからかもしれない。あの「ブロードキャスター」はなぜ終了しなくてはならなかったのだろう。
「キャスター」がニュースの「編集者」の意ならば、花形アナウンサーと国民的タレントの間で、「不在」となるのは必然に違いあるまい。
田山了一
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■