小原眞紀子さんの連作詩篇『Currency』『互』(第27回)をアップしましたぁ。金魚屋から『文学とセクシュアリティ-現代に読む『源氏物語』』を好評発売中の小原さんの連作詩篇です。今回は『互』です。
時間がすべてを
ぐるぐる巻きにする
世界を
君を
僕を
ときに太く
かすれながら
染められたり
絡まったり
わかった気がする
すべてを拒む
ということが
わかった気がする
互いに見た瞬間に
ずれている
(小原眞紀子さんの連作詩篇『Currency』『互』)
詩のテーマは「人間同士の相互理解は可能か?」といったものになるかと思います。原理的に言えば不可能ですね。私の自我意識は唯一無二であるわけですから、他者の自我意識もそうなのであり、自己と他者は完全には理解し合えません。それを突き詰めて考えてゆけば絶望になるわけです。でも絶望しても何も変わりません。ぢゃ、どしたらいいのか? 自己と他者の絶対了解不可能性を客体化して冷たく眺めることですね。「互いに見た瞬間に/ずれている」でいいわけです。
文学者には、特にこれからの文学者には世界を相対化して把握することが重要になります。情報化社会は極めて複雑ですが、それを何らかの形で相対化しなければ人間知性の伸び幅は失われます。小原さんはこの客体化が得意です。詩でも評論の『文学とセクシュアリティ』でもそうですね。『源氏物語』から何かを学ぼうとすればそれを客体化するしかない。どれだけ冷たく客体化できるかで、読み幅は大きく違ってくるわけです。
■ 小原眞紀子 連作詩篇『Currency』『互』(第27回)縦書版 ■
■ 小原眞紀子 連作詩篇『Currency』『互』(第27回)横書版 ■
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