遠藤徹さんの連載小説『物語健康法(入門編)』(第03回)をアップしましたぁ。この小説は良質のエンターテインメントというだけでなく、遠藤さんという小説家にとっても大事な作品です。また小説というものを考える上でも重要な作品だと思います。
映画、テレビ、マンガ、それに小説と、物語がなければわたしたちのエンターテイメント(娯楽)はにっちもさっちもいきません。どのジャンルでも良質の物語を探しているわけです。では物語の力とは何かというと、遠藤さんの『物語健康法(入門編)』に描かれているような力が本源的なものだと思います。
石川は駆け出しの編集者の頃に、出版社や業界の人と衝突し、突っ張っている作家に、ベテラン編集者が『そんなことしてたら〝出世〟が遅れますよ』と言っているのを聞いたことがあります。そりゃそうだなとは思いましたが、一方で文学の世界の出世ってなんなんだろうと思いました。わたしたちが大作家と見做す作家は、自分の信念に従って意地を通し、生きている間は既存の文壇・詩壇や作家たちと衝突した作家が多い。既存のレールに沿って出世したいなら、会社組織などに属した方がいいんじゃないかと思ったわけです。
それはもう30年くらい前の話ですが、今や文学界の出世レール自体が消滅しつつあります。まだまだ既存レールの出世にしがみついている作家がかなりいますから、当面それは残存するでしょうが、確実に消え去ると思います。じゃその後に残るのは何かと言うと、作家の信念ですね。小説で言うと物語の力を深く信じることだと思います。
事件、つまりとりたてて物語がない純文学小説は、大衆小説に代表される物語文学全盛期でないとその価値を維持できません。石川ですら、ほとんど修行じゃないかと思えるような純文学小説を、今どき誰が読むんだろうと思います。
小説の原理は物語。この原点回帰を真摯に為さなければ小説の未来はないでしょうね。物語があるからと言って小説の文学的価値が下がることは絶対にありません。むしろキッチリと物語を作り、その上で物語り以上の何かを訴えてくる小説が、本当の意味での純文学だと思います。
■ 遠藤徹 連載小説『物語健康法(入門編)』(第03回)縦書版 ■
■ 遠藤徹 連載小説『物語健康法(入門編)』(第03回)横書版 ■
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