第06回金魚屋新人賞授賞の、片島麦子さんの連載小説『ふうらり、ゆれる』(第02回)をアップしましたぁ。『ふうらり、ゆれる』は書店の本棚に分類しにくい小説です。恋愛小説ではありません。サスペンスでもSFでもエッセイ的な小説でもない。純文学なのか大衆文学なのか迷う小説でもあります。でも読ませる。オードドックスなのですが、新しいという感じを抱かせる。つまり文学金魚好みの小説です。
連載なので分載になりますが、第1章で姉弟二人きりの古羊さんは、弟の詩音が結婚することになって一人暮らしになります。ちょっとした寂しさはありますが、お目出度いことですから喜んでいます。冒頭で古羊さんが悩むのは、今まで髪を切ってくれた詩音がいなくなるので美容院に行かなければならないことです。で、結婚式があり、弟夫婦の新居にお祝いを持って行く準備までが第1章で描かれます。
ペースが速いと思いませんか? 普通の小説なら、もっと結婚式とか古羊さんの孤独感の描写が増えると思います。でもこの小説は淡々と進んでゆく。で、所々にスリップのようにこの小説のテーマになるような記述が挟み込まれています。最後まで読まなければ、それが重要なスリップだということに気づかないような質のものです。
『ふうらり、ゆれる』という小説は、中編なのですが本質的に長編小説です。小説の長さというものは、物理的な長さと読者が受け取る心理的長さの二種類があります。この小説は後者の心理的印象として長い小説です。なぜ普通の小説よりもあっさりとした筆で書かれているこの小説が長いのか。それが『ふうらり、ゆれる』のテーマであり世界観でしょうね。
■ 片島麦子 連載小説『ふうらり、ゆれる』(第02回)縦書版 ■
■ 片島麦子 連載小説『ふうらり、ゆれる』(第02回)横書版 ■
■ 金魚屋 BOOK Café ■
■ 金魚屋 BOOK SHOP ■
■ 第7回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第07回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
■ 金魚屋の本 ■