星隆弘さんの『BOOKレビュー・小説』『No.004 世界を対流させるために––––原里実著『佐藤くん、大好き』書評』をアップしましたぁ。金魚屋の新刊小説原里実著『佐藤くん、大好き』の書評です。『佐藤くん、大好き』の特徴をよく捉えた書評になっています。
『佐藤くん、大好き』という小説が女性向けなのは、ある程度いたしかたない面があります。恋愛小説と銘打ってありますし、実際、小説は男女関係のお話が多いです。ただ読めばそれが、必ずしも男女関係に限定されないある本質を描いていることに、お気づきになる方がいらっしゃると思います。
この男女関係を描きながら、男女関係以上の何かを描いた小説に対する感受性を持っているのは、圧倒的に女性が多いです。江國香織さんとか井上荒野さんなどがお好きな読者には、すぐにピンと来るような世界です。男性にはわかりにくいといいますか、そういった感受性が働かない人が多いようです。
ただそれは、社会的動物として訓練を受け、恋する力を天上のものとしてしまう感覚を失ったからに過ぎないと思います。大人のまま子どもの感性に帰ればすぐに理解できますし、そういった天上を恋する力が、人間にとって一番大切な感覚だということも直観的に取り戻すことができます。
夕日の中、それぞれの家に帰ってゆく友だちの後ろ姿を見て、なんとも不思議な気持ちになり、寂しいと同時にこの瞬間が永遠に続けばいいのに、と思った子どもは多いはずです。それを大人になるまでずっと大切に抱いて来た原里実さんという作家は、特殊な面があるかもしれません。しかし小説界でも稀な才能です。『佐藤くん、大好き』、傑作なのです。
■ 星隆弘『BOOKレビュー・小説』『No.004 世界を対流させるために––––原里実著『佐藤くん、大好き』書評』 ■
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