鶴山裕司さんの連載エセー『言葉と骨董』『第046回 エチオピア正教のイコン(中編)』をアップしましたぁ。鶴山さんも書いておられますが、エチオピアには預言者モーセがシナイ山でエホバから賜った十戒の石板が、それを納める櫃ごとエルサレムからもたらされたという伝承があります。スピルバーグ監督作品でハリソン・フォード主演の映画『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』で、主人公インディアナ・ジョーンズ教授がナチス・ドイツから取り戻そうとするのが〝The Lost Ark=失われた聖櫃〟です。その現物がエチオピアにあると信仰されているのです。
アクスムからさほど離れていないラリベラには、世界遺産に登録された岩窟教会群がある。エチオピアで最も有名な遺跡だろう。教会群は十一の聖堂と礼拝堂から構成されている。作られたのは十二世紀から十三世紀。この教会群の建造法は世界に類を見ない。巨大な岩を下へ下へと刳り抜いて作られているのだ。だから信徒たちは、教会に礼拝する時は地下深くまで降りてゆかなければならない。
上から見ると十字架の形に切り出されているが、ラリベラの岩窟教会群の聖堂は箱形である。ノアの箱船の意匠ではないかと言う識者もいる。文書類が残っていないので明確な建造意図はわからない。ただこの時期に建国神話叙事詩『ケブラ・ナガスト』も作られているので、中世エチオピアでキリスト教を巡る大きな精神的盛り上がりがあったのだろう。またエチオピア教会建築やイコンには、石と箱のイメージが色濃く投影されている。
鶴山裕司
エチオピアの石製イコンと岩窟教会群、それにモーセの石板がつながってきましたね。鶴山さんの骨董を手がかりにした精神の辺境探索は後編に続くのでしたぁ。
■ 鶴山裕司 連載エセー『言葉と骨董』『第046回 エチオピア正教のイコン(中編)』 ■
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