田山了一さんのTVバラエティ批評『言いにくいことをハッキリ言うTV』をアップしましたぁ。テレビ朝日さんで月曜深夜に放送されているバラエティトーク番組です。各界有識者が独自の〝言いにくい極論〟を提示し、それに爆笑問題の太田光さんらが立ち向かうデベート形式の番組です。爆笑の田中さんがコンプライアンス担当で、危ない発言にストップをかけます。田山さんが書いておられるように、『テレビ番組でそれほどの爆弾発言がオンエアされる可能性などない』わけですが、スリリングな討論が期待される番組です。
前にもちょっと書きましたが、爆笑問題は面白いお笑いコンビだと思います。このコンビの笑いの基本は、切迫感だと不肖・石川は思います。太田さんは常に〝君たち笑ってくれなきゃ僕困る〟的な勢いで攻め込んでくる。それを田中さんがなだめ、時に凡庸な墓穴を掘ることで、さらなる太田さんの突っ込みを引き出してゆく。お笑いコンビはたいてい光と影の組み合わせで、光の方に視線が集まる傾向がありますが、影がなければ光は目立たない。太田さんは〝根拠のない自信家〟といった感じであります(爆)。彼に自信を与えてくれるのは田中さんです。太田さんの発言に真っ先に反応するのが田中さんですもの。
田山さんは『ネットは言いたい放題の悪意の塊りの場でもあることは、よく知られている。が、・・・管理する側も利用する側も訴訟などのトラブルを恐れ、発言には自主的にチェックが入るようになっている』と書いておられます。また『かつての出版人のコードは、良心に従って常に本音を語る・・・ことであった。批判された側もプロの書き手であるならば、・・・同じ土俵で正々堂々と反論した。そのジャッジは・・・読者が決めたのだ。それは罵り合いではなく、正規の試合であった。出版人たちから、そんな社会性や美意識が失われたのは出版不況以降だ』と論じておられます。
石川はもはや古株の編集者ですが、作家は打たれ弱くなっているなぁと感じること、しばしばです。作品を読んでくれた読者が10人いるとして、〝いいね〟と言ってくれる読者が10人いることは絶対にありません。5人ならまず成功だと思った方がいい。また残り5人からの批判には、真摯な批判が1つくらいは含まれているはずです。しかし最近の作家は批判を遠ざける傾向が強いですね。論争になっても、とにかく目先の〝敵〟を言い負かし、〝勝ち逃げ〟することに血道を上げているような感じです。
ネットメディアであれ紙メディアであれ、自分を心地よく受け入れてくれる狭いコミュニティを〝世界〟だと捉えているからそのような子供っぽいヒエラルキー争いが起こる。自分がちっぽけな存在として相対化され、批判され、ちやほやされ、それによってダメになっていくことを期待している人すらいる〝多様な世界〟は怖いですよ(爆)。メディアは自己と世界を繋ぐ媒体でしかありません。自己の創作に行き詰まりを感じている作家は、まず〝世界〟をどのように捉えるのかを考えた方がいいです。本質的な意味で世界=パブリックと捉えれば、自ずから書く作品の質が変わっていきますよ。
■ 田山了一 TVバラエティ批評『言いにくいことをハッキリ言うTV』 ■