SmaSTATION!!
テレビ朝日
土曜日23:15~
単なる個人的なテイストで恐縮なのだが、長い間、この番組にチャンネルを合わせることはなかった。小林克也の朗々としたナレーションが苦手だし、香取慎吾も冷たい雰囲気で好きではない。テレ朝のアナウンス部課長、大下容子はよくできた人だと思うが、ここでは職務として入っている感じで存在感がない。
彼女はあの原発事故のとき、わかったようなことばかり言う専門家たちに「それで注入している水は、どこへ行っちゃってるんでしょうか」と問い続けた人だ。そんな大下がフォローしなくてはならない問題など起きようもない番組だし。
要するに情報番組、もちろんかつての「ニュースステーション」のパロディというほどのこともなく韻を踏んでいるが、ニュースではない巷のちょっとした流行を伝える、というものだ。商品や大都会のスポット、近々に公開されるエンタテインメント企画などなど。
流行と言っても、土着的かつ自然発生的なものではなく、消費に関わるものであるところが、あまりカラーのない情報番組になっている由縁である。名ナレーター、国民的アイドルグループのメンバー、中間管理職のベテランアナウンサーという取り合わせが結果として互いの立場を牽制し合い、無色透明な情報の羅列にしている感がある。
が、このところ番組に、そこはかとない上向きの空気を感じる。以前と同様に情報を伝えているだけなのだが、なんとなく勢いがあり、面白味も漂う。これはしかし番組制作の変化ではなくて、世の中の景気から来るものではなかろうか。つまり確かに景気は上向きになりつつあるのでは、という。
それで純粋に、情報が目に入ってくるようになった。ちょっと見たい、知りたい情報が増えたのだ。景気が上向く、というのはこういうことなのだ。長い間、忘れていたが。行ってみようか、買ってみようか、食べてみようかと思うのは、その商品にというよりは、自身に未知の可能性を感じることだ。
景気が悪いときにこちらの耳に入ってくるのは、こちらの方が安い、こちらの方が得だというまさに「情報」で、それ以外は無駄なものだ。また安くとも、結局は金銭を使わせるもの、なくても困らないものに「お得!」と叫ばれても素通りしてしまう。どれもこれも距離をおいて見れば、どうせ夢など破れる。「SmaSTATION!!」の時間帯、土曜日は特に昔からろくなものをやっていないからね、などと、まったくの暇ネタにしか思われない。
景気がよくても悪くても、この番組で最も印象に残るのは、小林克也の空虚に響き渡るナレーションだ。この空虚感はしかし、今のような景気浮揚期には悪くなく、消費生活というものの本質を露わにしていて正直である。不景気であったつい先頃まで、寒々しく聞こえたそれがそんな余裕で捉えられるのも、まさしく景気が上向きの証しだろう。
そして景気がよくても悪くても、商品に対する香取慎吾と大下容子の淡白な距離感も変わらない。それはもしかするとこの二人が本来、物欲に薄いところから来ているのかもしれない。
山際恭子
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■