フジテレビ
木曜 22:00~
なかなか興味深いドラマである。惜しむらくは、人間関係が複雑というか、多すぎる感じがして、よほど最初からしっかり観ていないと話がわからない。しかし、そのわからなさが、ドラマのお決まりのパターンから外れていて、観ようという気を起こさせるのだから妙なものだ。
ようするにイマドキの30代夫婦の子供っぽさと、そこからくるゴタゴタを上からでなく、水平的な目線で捉えようということだろう。そこはコマーシャルなドラマというより、映画・演劇っぽいコンセプトで面白い。
濱崎光生(瑛太)は、東日本大震災発生時の帰宅困難時に、取引先の受付嬢の結夏(尾野真千子)と意気投合して結婚。それから2年後の現在、二人の性格も生活習慣も噛み合わず、なぜ結婚したのか、と疑念を抱いている。
震災の不安感から、共にいるべきでなかった男女が同棲・結婚に追いやられる。それも世にいう「震災二次災害」というやつに属する。今はちょうど、その被害の全貌が明らかになりつつある頃だそうである。まあ、2年もあれば、いっときのパニックでどんな判断の間違いを犯したか、たいがいの間抜けも気がつくというものだろう。
確かに地震は怖かった。しかし人間というものも怖くて、ただ怖さの種類が違う。うっかり寄り添うと徐々にやられる、ということもイマドキの30代は知らないのだ。そう言うのは容易い。
女性専用のアロマテラピー&タイ古式マッサージ店を営む上原灯里(真木よう子)は光生の大学時代の恋人で、彼女の夫の上原諒(綾野剛)は美大の講師で、結夏が働いているクリーニング店に妻には見せられない洗濯物を出していると、四人の登場人物は一種、演劇的な関係性を紡いでいる。
夫の浮気を見て見ぬふりで、にこやかに対応しつつ、突然怒り狂う妻を演じる真木よう子はドラマのアクセントだ。何をさせても魅力的な女優だが、しっかり者でありながら内に含んだ幼児性が、このドラマにおいては主題にもなっている。
実際、四人の行為やセリフは、一昔前の大学生か、20代のグループの恋愛ドラマと変わらない。人はどんどん成熟が遅れていると言われているが、今の30代前半~半ばぐらいというのは、ちょうど10歳ぐらい若いというか、幼いようだ。でも年齢相応に結婚していたりするから、ただの気まぐれが浮気とか不倫とかいうことになったりする。そこの歪みが観るべきところでもある。
昔より10歳若いというのは、30歳以上には一律に言えることかもしれない。25歳の子が15歳ぐらいだとは、さすがに思わないが、それでも昔でいう20歳そこそこの精神年齢だと思われる瞬間はある。
そのことはたぶん、いいことでも悪いことでもない。けれども形だけ「所帯」を持ちながら「自分探し」みたいなことをしなくてはならないというのも結構しんどく、見てられないものだと思う。観ているが。
山際恭子
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■