相棒 Season11
テレビ朝日 水曜 21時~
かなりの長寿ドラマだ。刑事ものでシリーズ、また登場人物の結構からようは日本版シャーロックホームズといったところだろう。
長寿であるのは高視聴率だからで、確かに脚本はだいたい標準以上、推理ドラマとしては、これはなかなか大変なことである。
特番やら、脇役を主役とした別筋の物語やら、あの「踊る大捜査線」ばりの展開を考えている気配もある。が、これについてはいかんせん、スケールが小さい。
そもそも最初はそっと、ひそやかに始まったドラマだったという印象が強い。まずは単発で様子を窺い、連続ドラマ化された当初は「二人だけの特命係」というサブタイトルが付いていたことからも明らかだ。いまやテレビ朝日の看板番組だが、好評と高視聴率の積み重ねからの「できちゃった看板」という感がある。そもそも特命係というフィクショナルな “ 窓際 ” という設定からして、しかもそれが「二人だけ」という限定詞からして、鳴り物入りだったとは思えない。
その存外な好評は、確かに主演・水谷豊の “ 和製シャーロックホームズぶり ” にあると思われる。知的でちょっと皮肉屋というのは欧米的なミステリの探偵キャラだが、さほどエッジが利いているわけではなく、小料理屋の女将といい仲、ぐらいのウェットな和風にソフィスティケートもしくはカスタマイズされた感じが長寿の秘訣であるのかもしれない。
しかしそのドラマの “ 狙い ” も番組開始の後、好評を受けてなし崩し的に定まったものだとすれば、「相棒」というしっくりこないタイトルも納得がいく。このドラマはどう観ても水谷豊シャーロックホームズのものであり、二人の相棒のものではない。若い相棒は、ワトソン博士にしか過ぎない立場である。が、それもシリーズの中で、制作側にも徐々にわかってきたことなのではないだろうか。
ワトソン博士のような静的な存在はしかし、現代のテレビドラマとしてはなかなか難しい。水谷豊が年配であるぶん、元気いっぱいの若い男優を使いたいが、その活躍どころはアクションか、組織との確執といったところになる。ところが水谷シャーロックホームズが際立てば際立つほど、その両要素とも不要になってくる。
初代寺脇康文の、あまり知的でない肉体派な感じは、水谷シャーロックホームズとは若干の齟齬をきたしていた。二代目の及川ミッチーは知的な雰囲気がすぎて何となく主役とのハレーションを起こし気味で、三代目の成宮寬貴の初々しく頭のいい男の子というのには期待したい。
相棒は、単に邪魔にならないというのではダメなのである。縁のない感じでもダメ、キャラがかぶるのもダメである。1+1 が 2 でなく、3 とか 5 とかになる感じにするには、水谷シャーロックホームズの年齢からしても、たぶん確かに「息子」っぽいあり方しかないのかもしれない。これが西欧風の探偵王道キャラとどう折り合い、さらなるものを生み出せるのか。和風シャーロックホームズにひたすら学ぼうとしたり、失敗して尻ぬぐいしてもらったり、ひょんな手柄をたてたり…あっと、それでは古畑任三郎か。いずれにしても「相棒」ではないな…。
田山了一
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■