連載リレーエッセイ〝あなたが泣けるもの〟小松剛生『No.002 あなたが泣けるもの2』をアップしましたぁ。ショートショート小説『僕が詩人になれない108の理由あるいは僕が東京ヤクルトスワローズファンになったわけ』を連載中の小松さんのエセーです。物書きの孤独と不安がよく表現されたエセーです。
うん。
泣けるもの。
泣けるもの?
果たして、こんな、30歳を過ぎてようやくドライヤーの素晴らしさに気付くような人間の「泣けるもの」を、世の中の人は知りたいと思うだろうか。
いくら世情に疎い僕でも、自分の「泣けるもの」なんて、これっぽっちも求められていないことぐらい知っている。
たぶん、ワサビのほうがよほど求められてる。
悲しい。
(小松剛生『あなたが泣けるもの2』)
小松さんは〝泣けるもの〟をたくさん抱えていて、それを表現している作家です。しかしそれは世の中で「これっぽっちも求められていない」。冷蔵庫の中にあるワサビを配った方が、他人は泣くことができるだろうという意味のことを書いておられます。彼の少しばかり自虐的な自己認識が正しいかどうかは別として、このエセーで表現された孤独は物書きにとって圧倒的に正しいものです。
〝他者は自分の創作に興味を持っていない〟。創作者はここから出発しなければなりません。その孤独と不安に耐え、ひたすら創作に集中し、「おや?」と思わず他人が振り向いてくれるほど圧の高い作品を仕上げなければなりません。でもすべての人が振り向いてくれることなどありえません。1000人のうち100人が興味を持ってくれれば成功で、100人のうち51人が面白いと言ってくれれば作品はまずまずの成功作であるはずです。
どんな場合であれ、作家は馴れ合いの、誉め合いの仲間を求めてはいけません。それは間違いなく作家を堕落させます。書くことの孤独と不安に耐えられない人は作家業には向いていない。自分の作品が広く読まれないのは、ほとんどの場合、当たり前のことです。もしそんな幸せが起こったら、〝天使〟が舞い降りたことになるでしょうね。でも天使はずっと傍にはいてくれない。いつも遠いところにいるか、さっきまでそこにいて過ぎ去った後なのです。
なお今回のエセーでは、フォトグラファーの砂田弓弦さんのお写真を掲載させていただくことができました。砂田さんに心より感謝申しあげます。
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第04回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
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