小原眞紀子さんの連載純文学小説『神違え』(第02回)をアップしましたぁ。『神違え』はマンション管理会社の交代に伴う軋轢を神話タッチで描いた作品ですが、よく読むとちゃんと現実の観察と分析に基づいています。

 

 当時の任期、一年を終えると、わたしたちは風呂桶から出て、次の長に代わった。(中略)

 慣例に従い、新しい長は籤で選ばれた。彼らはその籤に細工をし、自分たちの仲間の女を長にした。大都のメインバンクに勤め、校庭で子供が怪我をしたという男の女房だった。

 ヨリと呼ばれるこの女の、わたしへの憎しみは一通りではなかった。例のガス爆発で反対派決起が立ち消え、大都がこの山城の利権を失ってから、メインバンクに勤める夫は、反対運動不発の責任を取り、地方へ左遷させられたという。子供の怪我も、噂の呪術のせいと思い込んでいるようだった。

 長となったヨリは、大都を復帰させるため、すぐさま活動を開始した。もっとも直前の議決をひっくり返すことは規約で禁じられており、新たに議案を立てた。

(小原眞紀子『神違え』)

 

世の中ってかなりの度合いで銀行さんが仕切ってるのよねぇ。人気分譲マンションの角部屋(つまり一番いいロケーション)などは、マンションディベロッパーのメインバンクの行員さんが購入してることが多いでふ。ささやかな利権といふだけでなく、住民が管理会社の変更などを提起した時などには、それを阻止するミッションを負ったりします。管理費が入らなくなると、銀行はいろいろ困るのでふ。ミッションに失敗すると、地方への転勤が命じられるのも珍しくありません。

 

小説は基本、金と男女・家族関係などの、極めて現世的で、かつ論理的に解決不能な主題を扱う芸術です。『みんな頑張ろう!』は正論ですが、抽象観念です。現実を描く小説は、『うんわかってるよ、でもしかし』からしか始まらない。この〝でもしかし〟はミニマルな人間関係だけでなく、人間が作り出すマキシマスな社会全体にも当てはまります。小原さんの『神違え』が小さなマンションの利権争いを描きながら、神話世界になっている理由です。現実の出来事はいつも特殊で個別的ですが、それが普遍性を得るためには、個の苦悩を超えたレベルに超出しなくてはならないのです。

 

ところで6月18日開催の『文学金魚大学校セミナー』の会場を含む詳細を、もうすぐ公開します。文学金魚は文学の原理原則を大事にしますが極めてプラグマティックです。わけのわからない文学的議論はしません。書く上でも、将来の文学界を生き抜くためにも、できるだけ実になる議論をします。また文学金魚は意外と面倒見がいいです。なにせ常に優れた新人を探していますから。ご興味のある方は是非参加なさってください。

 

 

小原眞紀子 連載純文学小説『神違え』(第02回) pdf 版 ■

 

小原眞紀子 連載純文学小説『神違え』(第02回) テキスト版 ■

 

 

Web文芸誌のパイオニア 文学金魚大学校セミナー開催(新人支援プロジェクト)

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Web文芸誌のパイオニア 総合文学ウェブ情報誌文学金魚は、文学金魚執筆者によるシンポジウムと参加者の自由な質疑応答による参加型セミナーを開催します!。

 

日時2016年06月18日(土曜日)

開始時間午後03時30分~

場所近日中に発表します

参加費3,500円

懇親会費(オプション):2,000円

* セミナー修了後に懇親会を開催します。参加はご自由です。

 

テーマ ■

【テーマ】ジャンルの越境

純文学ラノベ、ロマンチック・ミステリ、純文学ホラー、自由な物語詩など、従来の文学ジャンルとは異なるオルタナティヴな文学を創り出すことを目指します。

【司会】

山田隆道(作家・TVコメンテーター)・小原眞紀子(詩人・東海大学文学部文芸創作学科非常勤講師)

 

プログラム(予定)■

シンポジウム

第一部 偏態小説と純文学エンタメ小説について

三浦俊彦(作家・東京大学大学院教授)

遠藤徹(作家・同志社大学教授)

第二部 ラノベと(純)文学について

仙田学(作家)

西紀貫之(作家・フリーライター)

リード小説大賞決定!

山田隆道(作家・TVコメンテーター)発案のリード小説(詳細は下記または『第一回『文学金魚大学校セミナー』開催記念インタビュー リード小説の意義について』参照)の大賞を決定し、大賞・奨励作については文学金魚への作品掲載を検討(バックアップ)します。

第3回金魚屋新人賞第一次審査通過作紹介

懇親会

いけのり(占い師・エッセイスト)の占いコーナーなど。

 

 

Web文芸誌のパイオニア 文学金魚大学校セミナー(新人支援プロジェクト)の趣旨

・才能ある若い作家の作品が発表できない、キャリアのある作家なのに一番出したい本にかぎって出ない、学者の卵の奨学金ですら返還義務があるなど、現在ではさまざまなジャンルが細分化され、文化間の交流がなくなっています。

・こんな時代だからこそ、文学金魚は創作者と読者、ジャンルとジャンルを繋ぐメディアとして誕生しました。

・セミナー参加者は新しい文学と出版カルチャー誕生の当事者・目撃者になれるかも!

・読むことと書くことの、あのワクワク感をみんなで取り戻そう!

 

【リード小説とは ~あなたの〝リード小説〟大募集!~】

・リード小説とは、あなたがすでに書いた、あるいはこれから書こうとしている未発表オリジナル小説の大筋やセールスポイント等をまとめた、映画でいえば、予告編です。

・文学金魚大学校第01回セミナーのお題として、書き下ろしリード小説をツイッター上で大募集します。完成原稿があるかどうかは問いません。

・選考は山田隆道(『第一回『文学金魚大学校セミナー』開催記念インタビュー リード小説の意義について』参照)が行います。講師の文学金魚連載作家陣も選考に加わります。リード小説から作家デビューの扉が開かれるかも。

・試されているのは自己プロデュース能力です。気楽に楽しんでください!

 

【総合文学ウェブ情報誌文学金魚について】

・文学金魚はジャンルの垣根を取り払い、文化融合的な状況の中から新たな日本文化を創・出することを目指します。

・セミナー参加者は楽しいお題で盛り上がるもよし、懇親会で人脈を広げるもよし。新たな文学シーン誕生のワクワクする瞬間、その当事者・目撃者になれるかもしれません。

・今は積極的に自己アピールし、様々な方法で作家としての活路を切り開いてゆける時代です。ネットと紙出版のインタラクティブな関係性にリアルな人間の息吹きを吹き込んで、文学カルチャーのホットスポットを創り出そう!