山田隆道さんの新連載小説『家を看取る日』(第04回)をアップしましたぁ。今回は芸能人の逮捕やお母さんが倒れたといった大きな事件は起こりませんが、より作品の本質に迫る転調の回です。『家を看取る日』は主人公が育った築90年の家を巡る物語ですが、家が古くなればそこに住む人たちも年を取るのです。精力満々だった親たちは次第に老い始め、やんちゃで元気いっぱいだった子供も身体の大きな大人になり、それに見合うような精神の成熟を求められていることに気づきます。

 

それにしてもテンポのいい小説です。また頑固で高圧的であるはずの父親が、ポロリと本音を洩らすシーンも見事です。大阪弁で表現される精神風土が上手く活用されています。東京文化ではこんな形で本音が表現されることはないでしょうね。方言(大阪弁を方言と言っていいのかどうかは議論があるでしょうが)を援用するときは、やはりその土地の景色や精神が見えてくるようでなければならないと思います。

 

山田さんは元放送作家で、現在は小説家兼フリーライターでラジオのDJなどもこなすマルチな才能をお持ちの方です。昨日の短歌批評で高島秋穂さんが、「露骨な言い方をすればお金と名誉が得られない業界には決して優秀な人材は集まらないのです」と書いておられましたが、それは全くその通りです。単に詩や小説について考え創作に携わった年月が長いことが作家のキャリアになる時代は完全に終わりました。高島さんに倣って露骨な言い方をすれば、不況産業である文学に最初からプロパーとして関わっている作家よりも、活気ある他のジャンルで才能を伸ばした作家が参入して来る方が文学界は活性化するかもしれないのです。そういった世の中の大きな動きに作家は目を閉ざしてはいけません。

 

逆に言えば文学プロパーだという自負のある作家は、他ジャンルから参入してきた作家を凌ぐような文学的認識と作品を生み出さなければなりません。そういった競争といふか切磋琢磨があって、初めて文学界は活性化すると思います。不肖・石川は文学ジャンルの編集者ですが、裏付けのない作家のプライドや、他ジャンルから参入して来た作家への偏見や嫉妬などは全く無意味だと考えます。文学界は弱者が集う避難場所ではありません。精神的肉体的に強くなければ生き残れないのはどの世界に行っても同じことです。

 

 

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