寅間心閑新連載小説『オトコは遅々として』(第01回)をアップしましたぁ。寅間さんの短編新作小説です。若い夫婦のお話で前回の『助平ども』とはまた違った展開ですね。妻の妊娠から始まる物語です。妊娠を知った夫が「おめでとう」と言い、妻が「バカじゃないの」と笑う。ありそうだなぁ。夫の方には子どもができたという実感がないんですね。
現代は男女平等社会です。もちろん完全に平等になっているとは言い難く、まだまだ様々な問題を抱えています。性的なハラスメント(たいてい男から女に対して)についても非常に厳しくなっています。これは当然のことですが、線引が案外難しいところはあります。ある女性がある男性に対して嫌悪感を抱くと、すべてがハラスメントになってしまう危険性はある。ま、そこまで含めて男の子たちは注意せよ、ということですが、会社や社会に訴える線引きがどこにあるのかが難しい。これは難しいまま当面進行しそうです。
ただこういった社会の大きな流れとは別に小説の世界というものがあります。小説の世界では社会の曖昧な部分、灰色の部分を描きだすのが鉄則です。大上段に構えた政治的主張や社会的主張が小説という表現で読者の大きな支持を集めたことは一度もないと言っていいほどです。小説は現世の、大きな声では言いにくい矛盾や本音を描き出すものです。
ただその描き方には細心の注意、と言いますか最大限のテクニックが必要です。灰色の矛盾や本音をそのまま書いたのでは小説にならない。表を意識して、それを最大限に表として提示しながら裏をスリップさせなければならない。でないと読者は食いついてこない。寅間さんは〝危ない橋〟を渡りたがる作家ですが、もっともっと危ない橋を渡っていただきたいと期待できる作家です(笑)。
■ 寅間心閑新連載小説『オトコは遅々として』(第01回)縦書版 ■
■ 寅間心閑新連載小説『オトコは遅々として』(第01回)横書版 ■
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