第8回金魚屋新人賞受賞の松岡里奈さんの小説『スーパーヒーローズ』第12回をアップしましたぁ。この小説は実にスリリングですね。今回は冒頭に「私は鏡に映った自分に愕然とした。私は老い始めていた。私は上がっていたものが下がり始めたことに怯え始めた」という記述があります。しかし主人公は恐らくまだ20代。老いにはほど遠い年齢です。にも関わらず老いを意識しているということは、精神的老いを示唆しています。
主人子に老いを意識させるのは、下宿先の家主、ゲイブの息子のジョニーです。高校生くらいの設定ですから、当然主人公よりも若い。ただ主人公がジョニーの若さを意識するのは実年齢だけではありません。そのイノセンス、その美貌(美少年ぶり)が激しく主人公の心を揺さぶる。単純化して言えば、若い男の何も考えていない直線的無垢、粗野で暴力的で、痴呆的でもある美に惹かれている。いずれも主人公にはない美質です。
このあたりに『スーパーヒーローズ』最大の魅力があるでしょうね。数多くのデュラス映画に出演したフランスの大女優、ジャンヌ・モローは「わたしは富も名声も手に入れたから、男は美しいだけでいいの」と言って、若い美男子の恋人を連れて公の場に現れました。大女優の気まぐれとも揶揄されましたが、エクリチュール・フェミニン(女のエクリチュール[小説])を代表する作家デュラスお気に入りの表現者です。んなわけがない。モローは絶望していた。当然ですね。作家ならわかるはずです。
■ 松岡里奈 連載小説『スーパーヒーローズ』(第12回)縦書版 ■
■ 松岡里奈 連載小説『スーパーヒーローズ』(第12回)横書版 ■
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