ホンマでっか!? TV4時間半スペシャル
10月3日(水)19:00~ フジテレビ系
明石家さんまという人は、素人を集めていじるという芸が確立している。
「さんまのまんま」など一対一のトークショーでは、当然のことながら芸人さん相手の方がラクそうだ。が、石原真理子 (当時) を嫌がって逃げようとしたタモリと違い、誰が相手でもそれなりに頑張る。しゃべり倒せばなんとかなるから、力技に持ち込む。さんま対大勢の場合の方がさらにラクそうだ。かつての「恋のから騒ぎ」でも、この番組でも、精一杯準備してきた素人さんに順繰りにしゃべらせてはダメ出しする。
「恋から」では、女の子たちの我が身の恋バナを、さんま一人で聞いてやるという独裁体制だったが、「ホンマでっかスペシャル」は受け手も他に大勢いて、さんまの存在感は希薄である。希薄と言えばマツコ・デラックスもそうで、さんまにせよマツコにせよ、このスペシャルの形式にドンピシャな感じではない。ピンで数字を取れる人たちを集めると、豪華にはなるけれど。
そもそも明石家さんまの素人いじりは、それによって面白くも何ともない、ただの人が妙に面白く感じられるように仕向ける、という類いのものだ。ロンブーの淳が狩野英孝や青田典子を仕立ててやったのに「愛」が感じられるのとは対照的に、さんまの場合には「手を抜かないライバル視」が新しい面白さの発見に繋がっている。
卓球の愛ちゃんが幼い頃、大人気なくも本気で立ち向かった明石家さんまに、わんわん泣きながら球を打ち返していた姿を覚えている人は多い。勝負の場というのはそういうものだし、教育的配慮もあったかもしれない。少なくとも、あれで愛ちゃんは国民的スターにもなった。そして戦場カメラマンも、タカビー女医キャラも、いったん出来上がってしまえば、あとは放置プレイだ。素人さんに「場」を設えてやっただけで、残る者が残る。
「ホンマでっか」に登場する方々は、大学の先生としても話がモタモタするし、キレは悪い。失礼ながら一流の学者とは思えないが、そのいいかげんな普通っぽさにツッコむのが、いじるということだ。いじられれば、そこから大スターは出なくても、愛すべき点は見えてくるし、本ぐらいは出る。
スペシャルにはまっているのは、磯野貴理子とか栗原類とかのわりかし普通の「悩み相談」で、それにその普通の先生方が対応する、といったものだった。普通であるということは、時間が引っ張れるということでもある。4時間半も流れていると、終いには何の番組だったかも、よくわからなくなる。
番組最後はなぜか草津のロケとなり、先生方が女性アナウンサーに引率されたり、湯もみをしたりというごくフツーの画面を見る羽目になった。が、視聴者は意外とそういうのが好きなのかもしれない。何となくテレビで顔を見覚えている人たちと、町中で遭遇したような気になる。かといってテンションが上がり、サインを求める気にも別にならないところがミソだろう。
山際恭子
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■