小原眞紀子さんの連作詩篇『Currency』『鳩』(第29回)をアップしましたぁ。金魚屋から『文学とセクシュアリティ-現代に読む『源氏物語』』を好評発売中の小原さんの連作詩篇です。今回は『鳩』です。
最も美しいギャンブルは
世界を見出すもの
ぐるぐる巻きの
因果をほどいて
丸のままの
世界をこの手に
するとその手は
青い翼となって
はばたく
札びら切って
空に舞い
誰かのほっぺた
ひっぱたく
現世の夢は遠く
遠く、小さくなる
Googleマップの点になる
天へ
そして信じている
糸巻きの
軌跡を描きながら
帰還する奇跡を
地上で
最も美しいギャンブルを
男たちがしている
(小原眞紀子『鳩』)
今回の詩篇は鳩レースを題材にしています。日本では今ひとつポピュラーではありませんが、世界的に見ると鳩レースは盛んで、高額の賞金を賭けたレースもあります。もちろん鳩レースは難しい。必ず帰ってくるとは限らないのです。お金が掛かっていなくてもそれはギャンブルです。だから「最も美しいギャンブルは/世界を見出すもの」ということになる。鳩の帰還は小さな奇跡とも言えるわけですが、勝負に対する確信がなければ奇跡は起こりません。
またそのギャンブルは、男というより男性性に属するものでしょうね。詳しくは小原さんの『文学とセクシュアリティ』をお読みください(笑)。男たちは天に駆け登るような賭けに血道をあげる。それを暖かいとも醒めたとも言える視線で女性たちが見つめているわけです。
■ 小原眞紀子 連作詩篇『Currency』『鳩』(第29回)縦書版 ■
■ 小原眞紀子 連作詩篇『Currency』『鳩』(第29回)横書版 ■
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