ラモーナ・ツァラヌさんの連載小説『思い出の谷』(四 最終回)をアップしましたぁ。ラモーナさんの故郷・ルーマニアを舞台にした初めての小説です。ラモーナさんの小説は『思い出の谷』で4作目です。
『思い出の谷』はキレイにオチている小説です。小説にはオチがなければならないとは言いませんが、まず作家は一つの世界観を完結した形で読者に提示しなければなりません。そこからオチない小説、つまりは一筋縄ではいかない複雑な小説が生まれてくるわけです。石川は作家の表現には〝核〟がなければならないと思いますが、この核を相対的に眺めれば比較的スッキリした小説になりますし、核の中に突入してゆけば複雑な小説になる。設定が複雑で前衛的だからと言って、そういう小説がより高次の核を持っているわけではありません。むしろその逆で、核の不在を隠すために複雑な設定になっている場合が多い。
ラモーナさんの小説処女作は『時空堂』ですが、この作品ですでに極彩色の世界と音楽が表れていました。このような世界観を持っている日本人作家はとても少ない。ラモーナさんが敬虔な正教徒だからこういった世界観が生まれるわけですが、まあ身も蓋もない言い方ですが彼女はインテリなので、自身の世界観を相対化しています。でなければ能楽の研究者ではいられない。ただ世界の中で自己を相対化した上で独自の世界観を提示できる作家は強い。ラモーナさんの次回作、楽しみです。
■ ラモーナ・ツァラヌ 連載小説『思い出の谷』(四 最終回)縦書版 ■
■ ラモーナ・ツァラヌ 連載小説『思い出の谷』(四 最終回)横書版 ■
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