原作・小原眞紀子、作・露津まりいさんの連載サスペンス小説『お菓子な殺意』(第15回)をアップしました。カオルさんの不在をよそに、綾子を主人公にしたサスペンスは進んでゆきます。〝不在〟はサスペンス小説では古くて新しいテーマであり、また現代的テーマでもあります。わたしたちはもう中心があるとは言えない世界に生きているからです。でも中心がないのに調和は保たれている。これから調和原理が明らかになるのか破綻が訪れるのかはわかりませんが、サスペンス小説で現代的テーマを描くことは十分可能です。
露津まりいさんも小原眞紀子さんも50代作家です。石川はもちろん20代、30代の新人作家に大きな期待を寄せていますが、今の閉塞した文学状況を本質的に変える力があるのは50代作家だろうなぁとも予想しています。彼らは戦後文学をよく知っていますし、その消滅(瓦解といった方がいいかな)理由やそれ以降の世界の変化についても肉体感覚で知っているからです。漱石がそういうポジションでしたね。漱石は文語体小説から口語体小説の激変の時代に、なーんも作家活動しなかった。時代の趨勢を見極めて爆発的作家活動を開始した。同じことは二度起きないでしょうが、似たような事態は起きるでしょうね。思想や現実制度を含め、既存の文学コードにとらわれない作家がポーンと出てくる可能性はあります。
創作者が一番やってはいけないのは停滞と先祖返りです。新たな興味対象を見つけて思想と感受性を常に更新し続けなければなりません。50代くらいになると、まあ今も昔も似たようなものですが、突然政治に興味を持ったり、仲間を募って学生時代を懐かしむような古本屋巡りや飲み会を開く人たちがいます。以前はクローズドでしたが、今はSNSで垂れ流しになるから厄介ですね。作家の場合、要はやることがないからそういう停滞と先祖返りが起こる。若々しいんぢゃなくて堕落が始まってるんですな。作家は新しいタイプの作品を世に問う創作者のことです。40代50代で地力のある作家に期待しているのでありますぅ。
■ 原作・小原眞紀子 作・露津まりい 連載サスペンス小説『お菓子な殺意』(第15回) (縦書)版 ■
■ 原作・小原眞紀子 作・露津まりい 連載サスペンス小説『お菓子な殺意』(第15回) (横書)版 ■
■ 第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■