お待ちかね、小説ジャンル越境作家、仙田学さんの新連載小説『ツルツルちゃん 2』(第19回)をアップしましたぁ。『第七章 吊り橋の手塚様(下)』篇です。映一君と羊歯ちゃんは、未来ちゃんとイケチン捜索のために決死の覚悟で吊り橋を渡るのです。決死といふからには、それなりの覚悟が溢れ出るわけでして・・・。
「うらやましかったから」
「えっ」
「先斗町未来がうらやましかったから」
羊歯は背を向けて立ち止まったままだった。
風に散っていきそうな声だったが、おれにははっきりと聞き取れた。
「未来がうらやましいって?」(中略)
「映一といつも一緒にいる先斗町未来がうらやましい」
「おれと一緒にいる未来が?」
つないでいた手を離し、羊歯は両手でロープにつかまった。
「いつも映一と一緒にいて、転びそうになったら手を貸してもらえて、歩けなくなったらおんぶしてもらえて、テストのヤマ張ってもらえて、プロレスの相手してもらえて。すごく、すごく、うらやましい」
羊歯はつっかえながら、だがいちども中断することなく話した。
まるで長いあいだ練習をしてきた芝居のセリフのように。
これほど長く羊歯がしゃべるのを聞いたのは初めてだった。
「羊歯、おまえも……プロレスしたかったのか?」
「まったく違う」
羊歯はぶんぶん首を振った。
「安心したいだけ。わたしにも、支えてくれるひとが欲しいだけ」
(仙田学『ツルツルちゃん 2』)
羊歯ちゃんの初めての告白であります。んでこれが『ツルツルちゃん』といふグルグル小説の恋の成就になるんでせうか。それともやっぱグルグルは続くのでせうか。物語は怒濤のクライマックスへと続くのでしたぁ。
■ 仙田学 連載小説 『ツルツルちゃん 2』(第19回) 縦書版 ■
■ 仙田学 連載小説 『ツルツルちゃん 2』(第19回) 横書版 ■
■ 第04回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
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