「詩人と呼ばれる人たちに憧れている。こんなに憧れているにもかかわらず、僕は生まれてこのかた「詩人」にお会いできた試しがない。・・・いつか誰かが、詩人たちの胸ビレ的何かを見つけてくれるその日まで、僕は書き続けることにする」
辻原登奨励小説賞受賞の若き新鋭作家による、鮮烈なショートショート小説連作!。
by 小松剛生
貝の終わりとハードボイルド・ツイッターランド(1)
某月某日 呟きの場にて
「―――――」
呟きは玄人の口と書くことに、呟こうとして気付いた。
なるほど、道理で呟き素人の僕には呟くことができないわけだ。
ここは玄人たちの集いということか。
うむ、呟く前に呟きの天才を自称していた自分が恥ずかしい。
恥ずかしいので僕は貝になります。
サザエとか。
サザエのつぶやき、それはつぼ焼きか。
*
ああ呟くことが叶わないのであれば、いっそのこと口を閉じていよう。
私は貝になるのだサザエのつぼ焼きなどではなく、と思い立って口をつまんでいたら開かなくなってしまった。
これは困った。
医者に向かおうにも、どの医者へかかるべきかわからん。
しかし貝になろうとした私が、今さら人の医者にかかるというのもおかしかろう。
*
口が開かなくなってしまった私は、仕方なく貝専門の医者を尋ねることにした。
幸い、私には歯医者の友人がいる。
貝の医者、歯の医者。
大して変わらんだろう。
なんだか語呂も似ている。
私はさっそく彼の住まう桜新町桜新町へと向かうことにした。
*
「ずいぶんやっかいなことになってるな」
口の開かない私の様子を見るなり、さも幸せだと言うように奴は唇の端を吊り上げて微笑んだ。
どうやら友人だと思っていたのは私の勘違いだったらしい。
こんな薄情者に会うためにわざわざ遠出してきたのかと思うと、なんだか腹が立ってきた。
ついでに席も立つことにする。
*
すると奴は「まぁ待てよ」と、私の口をつまんだ。
情けないことに上唇をつままれた私は、へなへなと床に座りこんでしまった。
おのれ、性根がどんなに腐っていようとさすが医者。
人体を知り尽くしている。
「貝の医者の居場所だろ、教えてやるよ」
*
「なに、本当か」
持つべきものは友人である。
「ただし、再び呟けるようになるかどうかまでは保証しないぞ」
構わん、私には呟かなければならない理由というものがあるのだ。
聞けば貝の医者は恵比寿一丁目で開業しているという。
ずいぶんと貝も人間的になったものだ。
*
これも今という時代が産んだ副産物か。
貝はどんどん人間的になり、人はどんどん貝に近づいてるやもしれぬ。
ならば貝の医療が流行るも道理。
私はそんなアンニュイな気持ちと、土産代わりの江ノ島でとれた海の水を携えて、貝の医者とやらを訪ねることにした。
途中、ため息混じりのアコヤガイとすれ違う。
*
どうやら道に間違いはなさそうだ。
やがて恵比寿一丁目の交差点を左に折れると、人生の苦悩をそのまま山にしたような坂道に出くわした。
呟きをもたない私は唸ることもできずに静かに一人、そこを登るのだった。
うむ、辛い。
やはり人生は辛い。
*
『仮の宿』
それが貝の医者が門戸を構える建物の名前だった。
貝のくせに、なかなか洒落ている。
中へ入るとたくさんの貝が待合室で暇をつぶしていた。
イモガイやカキ、ウミウシ、ウニ、トリガイ、ホラ。
私はカラスガイの横に座ることにした。
*
ああ恥ずかしい。
私一人が人間のいでたちをしている。
人として生きることがこんなに滑稽で恥ずかしいことだったなんて。
隣のカラスガイがじろじろとこちらを見ているのがわかる。
恥ずかしい、穴があったら入りたいがあるはずもないので、私は自分で穴のふりをすることにした。
かくして私は穴になった。
つづく
貝の終わりとハードボイルド・ツイッターランド(2)
「――さん」
うるさい、私は穴なのだ。
穴に話しかけるでない。
「――さん、診察です」
受け付けのカタツムリ女史の声で、私は自分の診察時間がきたことを知った。
「穴になってる場合じゃありませんよ。ヤドカリ医師がお待ちです」
しまった、穴になんかなるんじゃなかった。
これでは診てもらえない。
*
「――さん、どうしました。診察の時間ですよ」
今度は別の、女史より幾分低い声がした。
おそらく当のヤドカリ医だろう。
「お、こりゃいい穴だ。湿度、狭さ、暗さ申し分ない。よし決めた。今日からここが私の住処だ」
冗談じゃない。
ヤドカリなんかに住まれてしまったら穴ではなく、家になってしまう。
*
「先生、困ります。仕事してください」
「うるさい、医者なんかやってられるか。私はここで静かに暮らす。冷たく心地よい床で遠い海を想うのだ」
二匹は私という穴の中で勝手に言い争いをしている。
――なんということだ。
私はヤドカリの終の住処として一生を終えようとしている自分を恥じ、絶望した。
ああ、穴があったら入りたい。
*
「――さん、聞いてるんでしょ? お願い、先生を穴から出して」
これはカタツムリ女史か。
そんなこと言われても今の私にはどうすることもできない。
私という穴は絶望に包まれてますます冷たくなったようで、ヤドカリの阿呆は「うーん気持ちいい」とすでに寝言を呟いている。
呟きたいのは私のほうなのに。
*
「先生をここから出してくださるんでしたら、あなたがまた呟けるようにアタシが何とかしますから」
またとない話だった。
また?
はて、私は以前に何かを呟いたことがあったのかしら。
「それでいいですね? いいということにしますよ?」
まあ今はそんなことどうでもよい。
過去とは人の持つものであって、穴である私はただ冷たくあるべきだ。
返事すらできない私の返事を汲んでくれた女史は、私の意識をアメフラシにしてくれた。
身体は依然として、ヤドカリの住処だ。
*
「さ、先生を穴から出してください」
アメフラシになった私に女史が言った。
こうして改めて見ると、なんとも彼女は魅力的だった。
上目づかいの触角がチャーミングに揺れている。
「その前にひとつ聞きたい」
「何?」
「君の名前は?」
私と彼女の身分など海水魚と淡水魚の生態ほどに違うのかもしれないが、なに構うものか。
*
「名前なんか聞いてどうするの」
「君を呼ぶことができるじゃないか」
好きに呼んだら、とカタツムリ女史は憂鬱そうに顔を歪めた。
「名前なんかなくても、バラという香りはそのままなんだし」
うむ、今だかつてこんなにもシェイクスピアの似合うカタツムリがいたであろうか。
*
「あのヤドカリの阿呆を穴から出したら、名前も教えてくれ」
この際プライドなど二の次、三の次だ。
必死に食い下がる私に彼女は仕方なくうなずいた。
「先生を出してくれたらね」
貝の医者がいなくなったことで待合室が騒がしくなり始めた。
受付の彼女はまもなくその対応に追われつつあった。
*
ああ悲しい。
約束というのは結ぶときがいっとう悲しい。
私は業務に追われる彼女の殻を振り返りながらも、その建物を後にした。
私はこの先幾度と無くあの殻を思い出すだろう。
表情の見えない彼女の殻は、それ故にとても美しく右にうずを巻いていた。
恵比寿の町並みはいつもより静かな土曜日であった。
*
アメフラシとして人の街を歩く気分というのは如何とも説明し難い。
まるで他人の家で暮らしているような感覚だ。
通行人の視線が突き刺さろうとも何とも思わない。
責任という言葉は人だった頃の身体に置いてきたらしい。
他人、だなんて。
人はなんと面倒な事柄に縛られているのだ。
*
しかしアメフラシの自由を手に入れたところで、ヤドカリを穴から出さなければ問題は解決しない。
問題。
それは人々の呟きの数のごとく、どこにでも転がっている。
この物語も、どうやらここにきて転がす必要がありそうだ。
私の敬愛する吉田君によれば、「さて」と言えば物語というものは転がるらしい。
つまり私はまず「さて」を探さなければならないというわけだ。
さてさて、いったいどこにあるというのか。
*
吉田君はこうも言った。
「夕食の献立に迷ったときにスーパーに行っても無駄だよ。まずは冷蔵庫を開けなさい」と。
なるほど、一理どころか二理はある。
というわけで、私はデパートの家電売り場へと行くことにした。
多分に希望的観測ではあるが。
「さて」が冷やされているかもしれないではないか。
*
「お客様、困ります」
冷蔵庫をばったんばったんと開けている私に店員が声をかけてきた。
「なぜだ」
「こちらの冷蔵庫は人間用に作られたものでございます。アメフラシ用ではございません」
なんだと、それは差別だ。
アメフラシが冷蔵庫を使ってはいけないという法はなかったはずだ。
*
「ならアメフラシ用の冷蔵庫をもってきてくれ」
「すみません、当店ではお取り扱いしておりません」
なんて品揃えの悪い店なんだ。
――ええい構わん。
たとえ世界が今終わろうとも冷蔵庫を開け続けるぞ、と息を巻いている私に、2メートルほどの身の丈をもつ警備服の大男が向かってきた。
これは困った。
世界の前に私が終わってしまうのではないか。
*
やむなく「さて」の捜索を一時中断し、私は今しがた開けていた冷蔵庫の中に逃げ込んだ。
やれやれ、人というものは相も変わらず騒がしいうえに小心者なようだ。
冷蔵庫を開けるくらいのこと、いいではないか。
私は一息つくと暗い室内を見渡してみた。
幸いなことに電源が入っていないので、凍え死ぬことはなさそうだ。
*
「む」
奥を覗くと下へと続く階段があった。
表ではまだ人の気配がする。
個性は好奇心がつくるものだと誰かが言っていたが、人間もアメフラシもその点は同じやもしれぬ。
私は私という名の好奇心に負けて階段を降りた。
ああなんてことだ。
そこは私と同じ種が、つまりアメフラシが働く鍵工場であった。
つづく
貝の終わりとハードボイルド・ツイッターランド(3)
物語の中でトンネルを抜けると雪国があるらしいが、冷蔵庫を抜けた先には工場があるらしい。
私は自分の仲間というべきなのか多くのアメフラシたちが、鍵が流れるベルトラインの側面に立っている様をぼんやりと眺めていた。
彼らは金気臭い鍵ひとつひとつに品番プレートをつけたり、何の装飾もない木製の箱に詰めたりしていた。
*
「おいこら、仕事をさぼるんじゃない」
突然、私は誰かに背中をつかまれて他のアメフラシたちと同じように工場ラインの側道に立たされた。
「君はここで鍵を冷やして形を固めてくれ」
つかんできたのはウミウシだった。
どうやらここの監査員らしき生物のようだ。
そうして私は働くことになった。
*
私は先の短いノズルで、流れてくる鍵に次々と冷却用スプレーを吹きかけていった。
なるほど、世界中の鍵はこんな風にアメフラシの手、いや触覚で作られていたのかと納得する。
平気で鍵を使っていた人間の時分には思いも寄らなかった事実だ。
大げさかもしれないが、真理の一端を目の当たりにしたような気分だった。
*
だがいかんせん退屈だった。
真理とは退屈でできているのか。
ほんの10分ほどノズルを握っているだけで飽きてきた私は、隣の疲れ果てた顔をしたアメフラシに話しかけてみた。
「休憩はまだかな」
「そうだな、あと5時間ってとこじゃないか」
冗談じゃない。
だいいち、鍵ばかりつくってどうするのだ。
*
疲れ顔のアメフラシは言った。
「それが人生ってやつだよ」
「どういうことだ?」
「だからさ、人生ってやつは開けるドアもない鍵をつくるようなものなんだよ」
よくわからんが、とにかくこの工場からは早いとこ退散するべきだ。
「なあ、一緒に逃げよう」
「逃げていいのか?」
疲れ顔は心底驚いているようだった。
*
「いいに決まってる」
「いや、やっぱり駄目だ」
首の代わりに触覚を振った疲れ顔は続けた。
「逃げたらすることがなくなる。誰にも必要とされなくなる」
彼はどうやら私より幾分この工場に思い入れがあるらしい。
私は訊いてみた。
「君はここに長いのか?」
「もう20年ほどかな」
都合が良い、と思った。
*
「なら教えてくれ。ここに『さて』はないか? 私の物語は今、転がることを必要としているんだ」
「『さて』があるかどうかわからないが、接続詞の鍵なら向こうでつくっているはずだよ」
疲れ顔は工場のさらに奥を指して言った。
ありがたい。
私は道を指示してくれた彼に何かお礼をしたかった。
*
「そうだ、これを」
それはあの憎きヤドカリの阿呆に土産として差し出す予定だった、江ノ島の海水を詰めた小さな瓶だった。
「ありがたい。久しぶりの海の匂いだ」
彼は気持よさそうにそれを飲み干した。
今までろくな目に合ってこなかった私ではあるが、彼は本当に気のいい奴だった。
いい奴は皆、不幸なのだ。
*
私は彼と再び会う約束をして泣く泣く別れた。
やはり約束は結ぶときがいっとう悲しいものなのだ。
私はウミウシに見つからぬよう奥へと進んだ。
するとなるほど、そこには大量の接続詞たちが鍵となってラインを流れていた。
「だから」の鍵。
「それから」の鍵。
「しかしながら」の鍵。
「まず」の鍵。
*
中でも一際小ぶりな鍵が、ラインの隅で光り輝いているのを見つけた。
私にはわかった。
これこそが「さて」の鍵だ。
「おい、何をしている」
まずい、ウミウシの連中に見つかった。
私はその求めていた鍵をひとつだけつかむと、できる限りの速さで走った。
うむ、遅い。
やはりアメフラシの身体はスピード競技に向いてない。
*
追いつかれるかと思って振り向くと、なんと奴らも遅い。
どうやら運にはまだ見放されてはないようだ。
「待て」
「誰が待つものか」
工場内は今やパニックになっていた。
「待て、その鍵がなければどこかの物語が転がることなく終わってしまうんだぞ。お前にその責任がとれるのか」
*
そんなもの、とれるわけがない。
しかし。
「私にだって物語があるのだ。誰にだってそれはあるはずだ。他人の物語までかまってられるものか。そして私には、私の話に関わった奴らを何とかする義務がある」
「その覚悟があるのか」
いつの間にか私たちは追いかけっこをやめていた。
*
「ある」
私は大声で叫んだ。
今や工場中のアメフラシたちが私に注目していた。
ラインは止まり、冷たい空気の流れる音がした。
静けさの音だ。
「本当か? その鍵の届け先を見てみろ」
言われた私は手元の鍵に貼られたシールを覗きこんだ。
ああ、なんということだ。
*
そこにはあの、歯医者の友人の名前が印字されているではないか。
「どうだ、それでもお前はその鍵を自分のために使うというのか」
ウミウシたちは私の目の前で薄ら笑いを浮かべていた。
「かまわん」
「なに?」
そのときである。
あの疲れ顔が、背後からそっと冷却ノズルを私に手渡してくれた。
*
「かまわない、と言ったんだ」
そう叫ぶと同時に私は冷却ノズルを噴射させていた。
ウミウシたちの足元が凍りつく。
「あとはまかせてくれ」
疲れ顔が言った。
「すまない」
「なーに、俺もすぐにここを出るさ。あの海水と、あんたが見せてくれた覚悟のおかげだ」
疲れ顔はもはや疲れ顔ではなくなっていた。
「ありがとう」
私は再び走った。
走っている間、助けてくれた彼のことを考えた。
――次に会うときまでに呼び名を決めておかねばなるまい。
江ノ島の磯の香りに包まれた彼の名を。
*
そうこうしている間に工場内を抜け、冷蔵庫の中へ戻ってきた。
暗い室内は何かを予感させてくれるような稼働音がした。
寒い。
――なるほど。
私は全てを把握して、持っている鍵を冷蔵庫の内側にある鍵穴に差し込んだ。
がちゃり。
「さて」
*
鍵が回り、冷蔵庫を開ける。
そこは『仮の宿』医院の中であった。
「どこから入ってきたんですか」
訝しげな、しかし懐かしい声はカタツムリ女史のものだ。
「黙って入ってくるなんて、ちょっと失礼よ」
「いろいろあってね」
建物の中は閑散としていて、患者は一匹もいなかった。
*
「間に合ったのか?」
「間に合ったかどうかは無事に先生を出すことができてから決まるわ」
任せてくれ、と私は「さて」の鍵を握りしめて私の本来の身体である穴へと向かった。
彼女も後からついてきた。
彼途中、私が触覚を差し出すと彼女は少し止まって、それからゆっくりと自分の触覚をつないでくれた。
*
彼それは不思議な時間だった。
彼穴に辿り着くまでのほんのわずかな距離が、私たちのデートの時間であった。
彼お互い、無言になった。
彼ただひたすら相手の触覚にある温もりだけを手がかりに、言葉のない会話をしていた。
彼いつまでもこの時間が続けばいい、とさえ思った。
彼私はわざとゆっくりと歩いた。
*
彼やがて彼女が口を開いた。
彼「何もかも無事に終われば、あなたは人間に戻るのね」
彼「そのようだね」
彼「戻ったら、まずは何をするの?」
彼まずは医者に閉じたままの口を開けられるようにしてもらわねばなるまい。
彼「さて」の鍵も歯医者の友人に届ける必要があるだろう。
彼そして。
彼「やることはたくさんあるな」
*
「そう」
人間も大変なのね、と彼女は神妙な声を出した。
「いや、なかなかどうして、アメフラシも苦労してることがわかったよ」
「カタツムリもね」
二匹の乾いた笑いが冷たい穴の中に響いた。
ヤドカリのいるところまでもう少しだ。
ふと彼女が足を止めた。
「どうした?」
「もしも」
もしもの話よ? と女史が言う。
*
「人に戻ることができなかったら、絶望する?」
「どうだろう」
それはアメフラシに失礼な気がして、私はお茶を濁した。
「なぜ?」と訊くと
「なんとなく」と彼女。
「そうか」
もしかしたら世界中の扉はすべて「なんとなく」の鍵があれば開いてしまうかもしれないな、と私はなんとなく思った。
*
やがて私たちはひとつの扉の前に辿り着いた。
これこそが私とヤドカリ医にとっての「さて」の扉だろう。
私は小さな鍵を取り出した。
「さっきの答えをまだ訊いてないわ」
どうやら選択権はあるらしい。
そしてこれがその権利を行使する最後のチャンスだということも。
なんとなく、理解できた。
アメフラシか、人間か。
*
物語には必ず終わりがある。
終わってほしくない話もあるということを今、私は知った。
いつまでも女史のそばで迷っていたかった。
握りしめた鍵はまるで冷蔵庫の中のように冷たかった。
振り返って、もう一度彼女を眺める。
その殻は相変わらず右に美しいうずを巻いている。
*
扉が開けられるときを、二匹で待つことにする。
それは突然やってきた。
がちゃり。
「さて」
おわり
この作品は様々な方のご協力により、書き上げることが出来ました。冒頭の言葉は、白崎さんという、僕にいろいろと大切なことを教えてくださったかたよりお借りしました。また、一連の文章の題名は、村上春樹氏の『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を参考にさせていただきましたが、内容に関しましては一切関係ありません。それらの事実をここに白状すると同時に、この場を借りて深く感謝いたします。
2011年5月14日
小松剛生
(第23回 了)
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* 『僕が詩人になれない108の理由あるいは僕が東京ヤクルトスワローズファンになったわけ』は毎月24日に更新されます。
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■