佐藤知恵子さんの文芸誌時評『No.023 オール讀物 2015年09月号』をアップしましたぁ。坂井希久子さんの『We are the Champions』を取り上げておられます。オール讀物らしひ、ちょっとバイオレンスタッチで影のある青春小説です。
主人公はヤンキー仲間とつるんで遊んでいる女子高生ですが、中学時代からの親友の女の子が自分の彼氏と寝たことから、その女の子の吊し上げが始まります。それは必ずしも主人公が望んだことではありません。でもイジメと同じで、一度動き出した歯車は、当事者であってもなかなか止められないのです。
こういったお作品では細部が重要になります。言葉は悪いですが、小説ではお馬鹿な人たちを描く方が、頭のいい人間を描くよりも遙かに難しいのです。マリエは主人公であるがゆえに、当然、グループの論理を上か下に〝抜ける〟役割を担わされています。しかもグループの論理に首までどっぷり漬かりながらです。
(佐藤知恵子)
主人公の女の子は、この事件をきっかけに、不良グループの〝上へ〟と抜け出そうと決意します。佐藤さんは『ほとんどの子供が挫折を経験し、そこからの転換を迫られる正念場があります。マリエはその正念場で希望の方に舵を切ったのです。ただマリエの「覚悟」は切ないですね。この覚悟が本当に希望に向かってくれるのかは誰にもわかりません。(中略)だけど人が「一歩前に踏み出し」続ける限り、希望が失われることはありません』と批評しておられます。
作者の坂井さんは、かなりの小説テクニシャンですね。前に佐藤さんが取り上げた『HERO』という作品では青森弁が使われていましたが、今回は福岡弁です。佐藤さんは『ささやかですけどこういった点も作家様の実力ね。坂井先生の懐の深さがよくわかるお作品ですわ』と書いておられます。
■ 佐藤知恵子 文芸誌時評 『No.023 オール讀物 2015年09月号』 ■
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