『第03回金魚屋新人賞 第一次審査通過作品発表(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)』をアップしました。今年もたくさんのご応募誠にありがとうございます。心よりお礼申し上げます。身も蓋もないことを言いますと、人間の世界、どこまで行っても競争というか競り合いです。文学新人賞も例外ではないわけですが、これは本質的に自己との闘いです。以前、〝書き続けている限りあなたは作家です〟と書きましたが、それは本当のことです。ただ書けば書くほど小説文学への理解が深まり、作品の質が向上するのが理想であるのは言うまでもありません。
石川は職業柄、毎月文芸誌に掲載された主だった小説をかなり読んでいます。純文学系文芸誌に掲載された作品のうち、単行本化されるのはせいぜい半分くらい(それ以下かな)ですから、その現場はかなり生々しいです。はっきり言って、こりゃアマチュアだなと思う作品も堂々と掲載されています。じゃあなぜ有名文芸誌に掲載されるのか。過去に新人賞を受賞したか、過去にある程度の部数を売り上げたからです。これが一番わかりやすい小説界のコードです。乱暴な言い方をすれば小説界は徹底した〝実績主義〟です。
だからこれも乱暴な言い方ですが、小説は〝売れれば勝ちの世界〟です。もう少し現実の話をすると、小説界は文学出版三大大手である文藝春秋社の芥川賞・直木賞、講談社の野間文芸賞・野間文芸新人賞、新潮社の三島由紀夫賞・山本周五郎賞で新人・中堅作家の囲い込みを行っています。自社刊行作品が優先されるのは当然ですが、大人の事情を鑑みても、かなり頑張って平等・公平であろうとし続けている権威ある賞です。ただ本が売れればこの制度をスキップできます。売れればいいと言っているように聞こえるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。小説はある程度本が売れなければ何も始まらない、始められないと言っているのです(爆)。文学金魚もこの鉄則をある程度踏襲せざるを得ません。
要はそのために何をすればいいのかということです。これは版元だけでなく、作家も真剣に考えなければならない問題です。文学金魚は純文学系メディアですから、純粋に本を売りたいビジネス指向の作家さんとはあまり相性が良くないだろうと思います。ただバリバリの私小説系純文学作家がウエルカムかと言うと、そうでもありません。今後もこのマジックが通用するかどうかはわかりませんが、私小説系純文学作品をベストセラーにできるのは文藝春秋社文學界だけです。それが現実だと考えた方がいい。私小説で作家デビューしたいのなら、文學界新人賞が一番の近道です。
ただ文學界も変わろうと努力なさっていますが、私小説は制度疲労を起こしています。その他の小説ジャンルも同様です。ツカミはOKだけど、読み終わると型にはまっていると感じる作品が増えています。本が売れないから安全パイに傾いている気配がある。ただ小説に関する情報を簡単に入手しやすくなった分、作品技術は確かに上がっているのです。しかし作家の注意が小説だけに注がれ、狭く息苦しい作品になってしまうことが多い。文学金魚が総合文学を掲げ、ベンチャーとして外側から文学界に風穴を開けようとしている理由もそこにあります。
作家なら書きたい主題があるのは当たり前です。純文学系作家ならなおさらそうでしょう。しかしそれをいわゆる〝純文学作品〟として表現する必要はありません。サスペンスでも歴史小説でもホラーでもラノベでも可能です。現状の文学界でこれをやると、本はあるジャンルの棚に分類され、サスペンス作家、時代小説作家etcと呼ばれることになります。また作家はサスペンスで売れたら次々サスペンスを書くことを求められる。だけど本末転倒になるならそれはやらない方がいい。
小説業界のスタートラインである〝売れること〟を素直に受けとめれば、作品に大衆小説的要素は不可欠です。ただ本質的に〝純文学〟に相当する作家主題は、作品に大衆小説要素を盛り込んでも消えることはないです。得意不得意はあるでしょうが、小説ジャンルの中で、マルチジャンルを試みるのはその有効な方法です。たとえばホラー作家でラノベ作家で純文学作家というとイロモノにみられがちですが、プレゼン方法によってその印象はかなり異なります。そこが出版元の編集方針ということになると思います。
文学金魚のような新興Web文芸誌では、作品を型にはめることを要請しない分、作家に器用さと筆力が求められます。どちらも厳しい厳しい現実小説界でスタートラインに立つ――ある程度売れる――ためには不可欠の能力です。ただ様々なタイプの小説を高いレベルで量産できれば、自ずから小説界に影響を与えられます。今までの枠組みが変わるでしょうね。まあすんごく乱暴なことを言えば、絶対売れない私小説は小説を売ってから余裕をもって書けばいいんです。生活に余裕が出たら私小説は書けないという作家はそれまで。私小説とは何かを考え抜けば書けます。
■ 第03回金魚屋新人賞 第一次審査通過作品発表(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通) ■
Web文芸誌のパイオニア 文学金魚大学校セミナー開催(新人支援プロジェクト)
Web文芸誌のパイオニア 総合文学ウェブ情報誌文学金魚は、文学金魚執筆者によるシンポジウムと参加者の自由な質疑応答による参加型セミナーを開催します!。
テーマは〝ジャンルの越境〟です。そしてジャンルの越境は、人の現存在では性の越境にも置き換わる。文学金魚大学校第1回セミナーでは、早稲田文学の表紙を飾った伝説の仙田学さんの美しい女装姿が見られます! あらゆる制度の脱構築を意識することで、ジャンルの越境は初めて可能になるのです。我こそはという皆さまも、ぜひ女装・男装・コスプレのドレスアップでご来場ください。 超ステキな開催会場、日仏芸術文化協会もそれって大歓迎!とのこと!
■ 日時と会場 ■
・日時:2016年06月18日(土曜日)
・開始時間:午後03時30分~
・会場:日仏芸術文化協会 (東京都目黒区中根2-19-2 東急東横線・都立大学駅より徒歩約10分)
* 閑静な住宅街の中に位置する素敵な一軒家です。
・日仏芸術文化協会地図
・参加費:3,500円
* 参加者の皆さんには金魚屋刊行書籍一冊(定価1,500円)をプレゼントします。
・懇親会費(オプション):2,000円
* セミナー修了後に懇親会を開催します。参加はご自由です。
■ テーマ ■
【テーマ】ジャンルの越境
純文学ラノベ、ロマンチック・ミステリ、純文学ホラー、自由な物語詩など、従来の文学ジャンルとは異なるオルタナティヴな文学を創り出すことを目指します。
【司会】
山田隆道(作家・TVコメンテーター)・小原眞紀子(詩人・東海大学文学部文芸創作学科非常勤講師)
■ プログラム(予定)■
① シンポジウム
第一部 偏態小説と純文学エンタメ小説について
三浦俊彦(作家・東京大学大学院教授)
遠藤徹(作家・同志社大学教授)
第二部 ラノベと(純)文学について
仙田学(作家)
西紀貫之(作家・フリーライター)
② リード小説大賞決定!
山田隆道(作家・TVコメンテーター)発案のリード小説(詳細は下記または『第一回『文学金魚大学校セミナー』開催記念インタビュー リード小説の意義について』参照)の大賞を決定し、大賞・奨励作については文学金魚への作品掲載を検討(バックアップ)します。
③ 第3回金魚屋新人賞第一次審査通過作紹介
④ 懇親会
いけのり(占い師・エッセイスト)の占いコーナーなど。
■ 参加お申込用メールアドレス ■
お申込みはseminar@gold-fish-press.comへ! 。氏名・電話番号、パーティ(懇親会)参加の有無を明記してください。先着50名(FB枠35名)です。会場設営の都合上、懇親会のキャンセルは
【Web文芸誌のパイオニア 文学金魚大学校セミナー(新人支援プロジェクト)の趣旨】
・才能ある若い作家の作品が発表できない、キャリアのある作家なのに一番出したい本にかぎって出ない、学者の卵の奨学金ですら返還義務があるなど、現在ではさまざまなジャンルが細分化され、文化間の交流がなくなっています。
・こんな時代だからこそ、文学金魚は創作者と読者、ジャンルとジャンルを繋ぐメディアとして誕生しました。
・セミナー参加者は新しい文学と出版カルチャー誕生の当事者・目撃者になれるかも!
・読むことと書くことの、あのワクワク感をみんなで取り戻そう!
【リード小説とは ~あなたの〝リード小説〟大募集!~】
・リード小説とは、あなたがすでに書いた、あるいはこれから書こうとしている未発表オリジナル小説の大筋やセールスポイント等をまとめた、映画でいえば、予告編です。
・文学金魚大学校第01回セミナーのお題として、書き下ろしリード小説をツイッター上で大募集します。完成原稿があるかどうかは問いません。
・選考は山田隆道(『第一回『文学金魚大学校セミナー』開催記念インタビュー リード小説の意義について』参照)が行います。講師の文学金魚連載作家陣も選考に加わります。リード小説から作家デビューの扉が開かれるかも。
・試されているのは自己プロデュース能力です。気楽に楽しんでください!
【総合文学ウェブ情報誌文学金魚について】
・文学金魚はジャンルの垣根を取り払い、文化融合的な状況の中から新たな日本文化を創・出することを目指します。
・セミナー参加者は楽しいお題で盛り上がるもよし、懇親会で人脈を広げるもよし。新たな文学シーン誕生のワクワクする瞬間、その当事者・目撃者になれるかもしれません。
・今は積極的に自己アピールし、様々な方法で作家としての活路を切り開いてゆける時代です。ネットと紙出版のインタラクティブな関係性にリアルな人間の息吹きを吹き込んで、文学カルチャーのホットスポットを創り出そう!
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■