第02回 文学金魚奨励賞受賞作 ルイス・キャロル著 星隆弘訳『アリス失踪!』(第05回)をアップしましたぁ。今回はアリスちゃんが歌う『ウィリアム父さん、いい歳こいて』が山場でせうかね。
「ウィリアム父さん、いい歳こいて
髪の毛だって真っ白い
なのに年中逆立ちしてて
年甲斐もなくって思わない?」
父さんせがれに「若い時分にゃあよ
脳みそつぶれるとびくびくモンでも
こちとらおつむがからっぽだとよ
そんならやるわい、いくらでも」
「何度も言うけど、いい歳こいて
こんなデブちんはふたりといない
なのに戸口の出入りにバク宙決めて
ねえ、そりゃどういうわけだい」
(星隆弘訳『アリス失踪!』)
といふ感じです。イギリスらしひノンセンス詩ですねぇ。すぐエドワード・リアを思い出す方も多いと思います。リアはキャロルよりも20歳年上ですが、ドンピシャの同時代人です。リアの詩も四行連(クウォートレイン)です。定型押韻詩ですが、ノンセンス詩は定型の方が書きやすいでしょうね。意味内容よりもリズムを大事にした方が、ユーモアなどを表現しやすいからです。
日本の古典には『梁塵秘抄』といふノンセンス詩の傑作がありますが、あれは七五調です。なぜ七五調かといふと、定型の方がリズム感がいいのと、五七だと最後が長くなって、意味的になってしまふからです。七五の方が意味的には中途半端になって、ノンセンス詩には効果的なんだなぁ。日本の自由詩ではノンセンス詩は谷川俊太郎さんくらひしか試していませんが、もっと詩人さんたちは試みてみてもいいかもしれません。ただしノンセンス詩で作品を量産するのって、けっこうむちゅかしひですよ。
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