露津まりいさんの連載サスペンス小説『香獣』(第22回)をアップしましたぁ。芙蓉子さん、いい度胸をしてます。けっきょく紫苑庵で一夜を過ごしたやうです。しかもかなりの熟睡(爆)。でも現実ってこんなものかもしれません。『玄関先で自分の靴が見当たらず、探すと傘立てに突っ込んであった。小宮路の咄嗟の早業だった。存外、こんなことに慣れているのでは、とふと思った』とか『香獣』は小技も冴えております。
「蘆目河さんでいらっしゃいますか」
三梼物産総務部長代理の蘆目河は、ノートにあった肩書きの中では最も位の低い、つまりノンアポの飛び込みでも確実に会えそうな、ほぼ唯一の人物だった。
「そうですが。エゼーナの小宮路専務からのお使いとか?」
一階ロビーに降りてきた蘆目河は、三十代半ばほどだったが、あの席に呼ばれるだけあって落ち着いてみえた。バティストーニなのか、スーツのボタンホールが手縫いだ。ブレゲの腕時計は少しばかり分不相応だった。さらに落ち着いているように声を低めているのは、受付嬢の耳を憚っているからに違いなかった。
今回はなにげにスルッと重大な展開が起こります。どうやらエゼーナの小宮路が紫苑庵で行っている香席は、株のインサイダー取引に絡んでいるらしひ。む~露津さん、株にも詳しいのですねぇ。大人だわぁ(爆)。でも本格サスペンスは徹底したリアルを前提に、そこで口を開ける人間精神の闇を描く小説ですから、こういった知識も必要です。スリリングなカマかけ面談は次回に続くのでしたぁ。
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■ 露津まりい 連載サスペンス小説『香獣』(第22回) pdf版 ■
■ 露津まりい 連載サスペンス小説『香獣』(第22回) テキスト版 ■