水野翼さんの文芸誌時評『No.005 怪 Vol.0044(2015年04月)』をアップしましたぁ。久しぶりの『怪』の時評です。池田さんは『怪の特集は、今回もふんだんである。出し惜しみや引き延ばしの気配がない。莫大な数の読者はいないかもしれないが、そうであれば離れてゆくこともないかもしれない』と書いておられます。
『怪』はある意味特殊な雑誌であり、理想的な雑誌でもあります。版元は角川書店ですが、世界妖怪協会が発行者で京極夏彦さんが不動の執筆者です。京極さんは熱狂的な水木しげる愛好者でもあり、妖怪マンガの大家・水木さんも『怪』にしばしば登場します。また〝主筆〟の京極さんの、驚異的な懐の広さが遺憾なく誌面に表れています。魅力と実力を兼ね備えた作家が中核にいて、マス雑誌に比べれば少数かもしれませんが、熱心な読者に支えられている数少ない雑誌です。
池田さんは『現在の状況は、ニッチな志向が束ねられることで成り立っている。・・・マスであること、またはニッチであることへの感動も批判も、衒いもない。その束としての現在をそのまま受け入れるようになっている。このような状況で有望なのは、ニッチであることが業界や制度のそれでなく、個の本質に根ざしたものだろう、と思う。特異なもののようでも、それが人の認識や願望のひとつであるかぎり、普遍に通じる可能性がある』とも書いておられます。
ちょっと前までは、マスメディアはとにかく大ヒットを目指す傾向がありました。しかし現在では大ヒットは社会が気まぐれに求めるお祭りに過ぎず、コンスタントにユーザーの欲求を満たすコンテンツこそが、メディアがユーザーに提供する商品のベースになりつつあります。ただそのような商品を生み出せるのは一握りの優れた作家たちだけです。そういった作家は自己の創作に対する強い信念と、それを世に送り出すための努力を惜しまない能力を持っているのが常です。
■ 水野翼 文芸誌時評『No.005 怪 Vol.0044(2015年04月)』 ■