露津まりいさんの新連載サスペンス小説『香獣』(第12回)をアップしましたぁ。エナーゼの女子社員変死事件について、芙蓉子は警察の事情聴取を受けます。小宮路専務も一緒です。『贋作師-フェイク・マスター-』もそうですが、露津さんは社会の裕福層(お金持ちや旧貴族)と底辺でうごめく、でも強い生命力を持つ人々を組み合わせるのがお好きだなぁ。それが作品にダイナミズムをもたらしています。
「週刊文潮」のトップ屋の蓬寺も社会を裏から見ることができる人間ですが、彼のキャラクタライズも魅力的です。二枚舌を使って利害関係者双方からお金を引き出そうとする。「だけど俺、糟谷に何か悪いことしてるか? ちょろちょろ情報、漏らしたところで、後からでっかく脅すことができなくなるわけじゃないだろ。小さい水漏れと大洪水、所詮はレベルの違う話じゃないか」と蓬寺は言うわけです。こういった物言いは魅力的です。一面の真理をズバリと衝くからです。
文字によって世界を描く(再構成)する小説文学って、本質的にゴージャスなものでありまふ。人間の日常生活に忠実に書けばいいといふものぢゃない。また浮世離れしたリッチな生活を書いても説得力を得られない。貧しいと言えるような生活者を主人公にしても、社会のアッパーが主人公であっても、世界のある本質がストレートに表現されている箇所が含まれれば、小説本来のゴージャスさが読者に伝わります。小説の場合、頭で考えた観念や思想なぞ、そういった矛盾や混乱をも含む世界の本質の前に吹き飛ぶのでありまふ。
主人公の芙蓉子はエロティック・オートマティックが疑われる自殺、あるいは自殺を装った他殺にも興味を持ったやうです。『香獣』はどんどん複線を増やしながら続いてゆくのでありますぅ。
■ 露津まりい 連載サスペンス小説『香獣』(第12回) pdf版 ■
■ 露津まりい 連載サスペンス小説『香獣』(第12回) テキスト版 ■