日本が誇る世界的特殊作家、三浦俊彦さんの連載小説『偏態パズル』(第42回)をアップしましたぁ。今回は印南哲治さんと金妙塾との出会い、そして金妙塾への不満が募っていく過程が描写されています。印南さんにとって金妙塾はディレッタント集団に見えてしまふのですな。ほんで苛立ちを募らせ、信念に基づいたさらに過激な行動(爆)へと突き進んでいく印南さんを、金妙塾が分析し文書として保管してゆくのです。このあたりのパッションと客観性が『偏態パズル』の面白いところであります。
よく知られているやうにフランスの国立図書館には禁書部屋がありました。宗教的異端書やポルノグラフィーなどを、人目に触れないやうに、でも破棄せず保管してゆくための部屋でした。二十世紀に入ってシュルレアリストたちが、この部屋からド・サドを始めとする、それまで全貌が知られていなかった作家たちの作品を発掘したのはよく知られております。日本の国会図書館にも、網羅的ではありませんが、その手のコレクションはありまふ。
この手の禁書、隠されているといふだけでも、ある種の読者の興味を掻き立てます。ただいつの時代でも問題になるのは読み手の質です。優れた読み手が登場し、その本質を分析、解明して紹介していかなければ、いつまでも好事家のためのアンダーグラウンド書籍に留まってしまふわけです。表舞台にある文学の名作とは異なり、アンダーグラウンド文化を表舞台に引き出すための視点が必要になるわけです。
三浦センセの『偏態パズル』は、いわゆるスカトロジーを中心とした風俗・映像・文書のオムニバスという側面も持っております。センセが書いておられるやうに、この文化が開花(?)したのは意外と最近です(細々と歴史を遡ることもできるやうですが)。小説ですからその本質を性急に探究することはないですが、現象面の多様を踏まえたパズルが、その意味を表舞台に引きだしてゆくことになるでしょうね。空前絶後の作品ではありますが(爆)。
■ 三浦俊彦 連載小説 『偏態パズル』(第42回) pdf版 ■
■ 三浦俊彦 連載小説 『偏態パズル』(第42回) テキスト版 ■