北村匡平さんの映画批評『創造的映画のポイエティーク』『No.003 テクストの暴力、イメージの解放―ジャン=リュック・ゴダール 『アワーミュージック』』をアップしましたぁ。北村さんはハリウッドの戦争映画について、『時空間と物語進行の「連続性(コンティニュイティ)」が、とりわけ重要視された。・・・それは換言すれば、観客が「物語」の登場人物に感情移入しやすくする技術だったと言ってよい』とまとめておられます。これに対し、『ハリウッドの文法に真っ向から反対し、映画を芸術にしていったヨーロッパ・アート・シネマ』があり、『アワーミュージック』も、『明らかに反ハリウッド的な手法で、戦争を扱った映画である』と評しておられます。
確かに膨大な数の戦争映画が作られておりその大半はエンターテイメント作品です。北村さんはそのような娯楽戦争映画を、『観客を登場人物に「感情移入」させ、物語に「没入」させながら、スペクタクル化したイメージの「崇高」なる体験や、「カタルシス」の心理的効果を与える映画』であると批評しておれます。ではゴダールの『アワーミュージック』はそのような映画と何が異なっているのか。
北村さんの言葉を引用すると、『アワーミュージック』は、『ダンテの『神曲』同様3部作構造になっており、まず天国1《地獄》では夥しい戦争のイメージのモンタージュが約10分間延々と流れる。・・・続く天国2《煉獄》では「切り返しショット」についてのゴダールの講義や女学生オルガの物語が中心となっており、ゴダール氏が内戦の爪痕生々しいサラエヴォの地に「本の出会い」というイベントのため招かれる。・・・天国3《天国》では、川のせせらぎと木洩れ日の中を歩くオルガが描かれる。第3部《天国》では、人々は穏やかな時間を過ごしている・・・』といった内容の映画です。
ゴダールの映画を何本か観たことがある方には、なんとなく内容が想像できると思います。このある種の観客たちを心からガッカリさせ、ある種の観客たちにとってはとてつもない問題作であり、傑作ともなり得る映画の意図や背景をもっとお知りになりたい皆さんは、北村さんのコンテンツをじっくりお読みください。
■ 北村匡平 映画批評『創造的映画のポイエティーク』『No.003 テクストの暴力、イメージの解放―ジャン=リュック・ゴダール 『アワーミュージック』』 ■