金井純さんのBOOKレビュー『絵のある本のはなし』『No.012 たのしいムーミン一家』をアップしましたぁ。フィンランドの作家、トーベ・ヤンソンさんのファンタジー小説です。日本では1969年からアニメ化されていますので、原作をお読みになっていない方でもムーミンはご存知だと思います。ただま、ヤンソンさん、日本でアニメ化されたムーミンがとぉっても気に入らず、『これは私のムーミンではありません』とおっしゃったことはよく知られています。金井さんの言葉を借りれば、『ムーミンはカバではない』といふことです(爆)。それはヤンソンさんの原作を読めばはっきりわかることであります。
金井さんは『結局のところ「ムーミンはカバじゃない」ということに尽きる。これを単なる自虐を含んだジョークと捉えていると、永遠に理解できまい』、『「ムーミン」とは「近代資本主義社会に回収されるために都合よく教育される子供の喩である一匹のカバ」ではなく、「定義不能なままに存在する、トロールという魔物の種」ということだ』と書いておられます。その通りなのであります。今回のコンテンツでは、ヤンソンさんがお描きになった絵も掲載しました。むちゃくちゃ上手いですよね。それに暗い。これを見れば、日本のアニメがいかに原作と異なった解釈で作られているかが理解できると思います。
『フランダースの犬』などが典型的ですが、ヨーロッパのファンタジー小説にはキリスト教譚に属する秀作がたくさんあります。宗教の違いを超えて世界中で受け入れられたのは、それが人間の純な心を描いているからです。ただヨーロッパは広い。東欧や北欧は、もちろんキリスト教圏ですが、ケルト的といいますか、汎神論的な精神性を濃厚に残しています。『ムーミン』はその系統を代表する作品です。優れたヨーロッパ文学作品には、アンチキリスト的、あるいは汎神論的作品が多い。現代的な用語を使えば、近世以降のヨーロッパ文学の秀作は、たいていポスト・モダン的だとも言えます。
■ 金井純 BOOKレビュー『絵のある本のはなし』『No.012 たのしいムーミン一家』 ■