外賀伊織さんの連載恋愛小説『ぐるぐる』(第09回)をアップしましたぁ。家族の関係は摩訶不思議ですなぁ。親子が敵味方のように完全に対立する場合もありますが、たいていは『ぐるぐる』の家族のように、反発し合いながらも切っても切れない関係で結ばれている場合がほとんどではないかと思います。今回の栞ちゃんとママの口論、ちょいと身につまされるような展開であります。
外賀さんは一人の人間の人格が、身近な他者によって揺さぶられる様子を描くのがうまいですね。文体は三人称一視点で、私小説的な心理の深みに描写を持っていくこともできると思いますが、そうしないところが特徴かもしれません。どこか主人公を突き放しているところがある。恋愛・家族小説ですが社会派的な趣のある作品だと思います。
ポスト・モダンといいますか、高度情報化社会の特徴は、人間(社会)にとっての規範的主軸となる考え方が設定しにくいところにあります。これを無理に一つの思想に収斂させようとすると、どうしても無理が生じてしまう。かといって拡散してとりとめのない世界という認識で作品を書くのも難しい。一作はそれらしい作品が書けても、書き続けることはできないでしょうね。核のない生成は本質的に不可能なのであります。
ただ大文字の思想(規範)が設定できない場合、一度、プリミティブなところに視線を移してみるのも一つの方法かもしれません。性や家族などはそのような主題でしょうね。もちろんこれらの主題を巡って膨大な作品が書かれてきたわけですが、それを現代的に捉え直せば、今の社会の焦点的思想のようなものが見えてくるかもしれません。社会派的恋愛・家族小説、面白いと思いますですぅ。
■ 外賀伊織 連載恋愛小説『ぐるぐる』(第09回) pdf版 ■
■ 外賀伊織 連載恋愛小説『ぐるぐる』(第09回) テキスト版 ■