金井純さんのBOOKレビュー『絵のある本のはなし』『No.010 アンジュール』をアップしましたぁ。ガブリエル・バンサン作の名作絵本『アンジュール』を取り上げておられます。ガブリエルさんはベルギー生まれの絵本作家で女性です。フランス語圏の作家ですね。1928年に生まれ2000年に死去されました。『アンジュール』はガブリエルさんの処女作で、文字はいっさいありません。ガブリエルさんは優れた画家でもあったわけです。日本語タイトルは『アンジュール』ですが、原文は〝UN JOUR, UN CHIEN〟で直訳すれば〝ある日、ある犬〟です。
金井さんは『アンジュール』の内容を、『いきなり車の窓から投げ捨てられた犬は、必死で飼い主の車を追いかけるが、振り切られて見失ってしまう。街を彷徨い、海を見つめ、人間に追い散らされるが、ついに心の通い合う少年と出逢う』とまとめておられます。たったそれだけの内容なのですが、この絵本、素晴らしいんです。いつまでもめくっていたくなる絵本です。
その魅力がデッサンにあるのは間違いありません。しかも『アンジュール』のデッサンはいっさい色のない木炭画です。それが色のついた絵よりも雄弁に何かを伝えてくれる。金井さんが『紙と鉛筆によるシンプルなデッサンが表現し得るものは本当のところ、物のかたちでも風景の雰囲気でもなく、生命感そのものでしかないのではないか・・・何を描こうと、そこに「息吹き」を吹き込むこと。それがデッサンなるものの到達点ではないか』と評しておられるとおりです。
現代絵画に至るまで、絵画は複雑に発達・変容してきましたが、その原点がデッサンにあるのは間違いないと思います。ピカソはマチスのことが大好きでしたが、それはマチスが素晴らしい線を引くことができたからです。マチスが引く一本の線は、ピカソが絶対に引けない線だったのです。『アンジュール』、いいですよ。まだ読んだ(見た)ことのない皆さんは、本屋さんなどで是非手に取ってみてください。
■ 金井純 BOOKレビュー『絵のある本のはなし』『No.010 アンジュール』 ■