大野露井さんの連作詩篇『空白』『第007回 Ⅵ 命』をアップしましたぁ。今回は死と再生が主題になった詩篇です。日本やヨーロッパの神話をかすかに想起しながら、そこからスッと自分の世界に入っていくところが大野さんの詩のうまいところです。
生れ変わるならありきたりなものでよい
勤めに退屈して痴態におよび家族を失う男
砂漠で月を見上げてばかりいる虎
発見された数式の重要性に堪えきれず燃え上がる紙
あるいは生まれ変わりについて夢想するいまのままの自分
このセンテンス、いいなぁと不肖・石川は思ったのでした。『生れ変わるならありきたりなものでよい/勤めに退屈して痴態におよび家族を失う男』までは普通の展開ですが、『砂漠で月を見上げてばかりいる虎』で一つ審級が上がり、『発見された数式の重要性に堪えきれず燃え上がる紙』で、超越的レベルまで精神を持ち上げていく。最終行は冒頭に戻って『あるいは生まれ変わりについて夢想するいまのままの自分』で締められますが、言葉が喚起した高い精神性は残ります。
大野さんの詩は螺旋を描くように紡ぎ出されていると思います。この螺旋状の言語運度は、形而上にも形而下にもつながっているようです。日本の詩はだいたい50行前後で、長くても一篇100行くらいです。でも大野さんの詩はその枠組みにはおさまりきらないだろうなぁ。詩人としてはとても珍しい長篇詩タイプの作家だと思いますですぅ。
■ 大野露井 連作詩篇 『空白』『第007回 Ⅵ 命』』 PDF版 ■
■ 大野露井 連作詩篇 『空白』『第007回 Ⅵ 命』 テキスト版 ■