露津まりいさんの連載サスペンス小説 『贋物師-フェイク・マスター』 (第 21 回) をアップしましたぁ。ついに二度目の殺人が起こってしまひました。しかも愛する人が渡してくれた水筒に毒が入っていた模様。雲間さん、危うしであります。彼は元々道を外れがちな人ですが、詐欺師という道を外れた人の中で自分の居場所を見つけられるかといふと、どうもそうではないみたい。さらに孤立を深めていくやうです。
人間は必ずといっていいほど欲しい物があります。詐欺師は人一番強く欲しいと願う人の目の前にそれを並べて見せるわけです。人間それなりに疑り深いですから、騙すためにはテクニック、つまり相手の心理を読む作業が必要です。骨董を蒐集している人でも単に物が大好きといふ人は少ない。実業家なら金があるだけでなく文化にも造詣が深いことを示したい、文化人なら目利きであることを誇示したいなど様々な理由が背景にあります。
そういう背景を的確に読み解けば騙しやすくなります。強引に買わせるのではなく濠を固めていって、「自分が買うべきだ」 と思わせればいいわけです。もちろん騙すのは悪事なので、騙すより騙される人の方が善人だといふ社会的了解があります。でも人間心理に注目すれば、騙す人騙される人双方に邪念がある。小説はそれを描き出していくわけです。
『フェイク・マスター』 の主人公、雲間さんは奇妙で複雑な人格の持ち主です。彼は生まれながらの詐欺師の素養を持っています。しかしなんか純なんだな。人間世界に絶望した果ての純粋さといいますか。追いつめられれば追いつめられるほど、雲間さんの人間性があらわになったいくように感じます。彼は詐欺師の集団の中で何を見るんでしょうね。不肖・石川、次の回が楽しみでありますぅ。
■ 露津まりい 連載サスペンス小説 『贋物師-フェイク・マスター』 (第 21 回) pdf 版 ■
■ 露津まりい 連載サスペンス小説 『贋物師-フェイク・マスター』 (第 21 回) テキスト版 ■