長岡しおりさんの文芸誌時評 『 No.014 すばる 2013 年 09 月号』 をアップしましたぁ。瀬戸内寂聴さんの巻頭掌篇小説 『わかれ』 を取り上げておられます。不肖・石川は読んでないのですが、長岡さんのダイジェストでは、む~、なんてことのない作品ですね。長岡さんが書いておられるように、『そんな都合のいいことがあるだろうか、と。これが男性の書いたものなら、そう思って馬鹿にするに違いない。が、作家としても女性としても長いキャリアのある瀬戸内寂聴の手になるとなると、考えてしまう』 という点が最大の読みどころかもしれません (笑)。
どんな業界にも功成り名を遂げた名士はいます。作家の場合、過去にそれなりのヒット作を書き、多くのファン層を抱えている方といふことになります。中にはご高齢の方もいらっしゃいますから、もう新作を書いてくださるだけで充分ということもあります。なんてことのない作品でも、後から振り返ると上善は水のごとしということだってある。それは過去に優れた仕事をした方の特権ですね。同じレベルの作品を新人や中堅作家が書いても、どの雑誌でもまず間違いなくボツになると思います (笑)。
ほんの一握りの大家を除けば、ほとんどの作家は自分の創作欲求と、メディアなどのクライアント側の要望を擦り合わせていかなければならないと思います。クライアントに迎合し過ぎるのもどうかと思いますが、そこで作家の社会性が試されているのも確かです。なんでも好き勝手に書いて発表できて、それを読者が大歓迎してくれるなら苦労はない。原稿をクソミソにけなされ、ボツにされた経験を持たない作家はほとんどいないはずです。他者のアドバイスに耳を傾け、時には大胆に方針を転回できるフレキシビリティも作家には必要だと思います。
■ 長岡しおり 文芸誌時評 『 No.014 すばる 2013 年 09 月号』 ■