菜穂実さんの連載小説 『ケータイ小説!』 (第 21 回) をアップしましたぁ。まるこちゃんはお家に帰ってきて、クライアントの 01 と接触したやうです。よい子の娘さんはやっぱお家にいるのがいいと、おとーさんの石川は思うのでした。だいたいまるこちゃんは、日常生活自体が事件のやうな女の子ですしね (笑)。
『ケータイ小説!』 はラノベに分類されるんでしょうが、ライトノベルは比較的新しいジャンル (造語) です。もちろん新しいジャンル名称は、内容的な変化が起こっていなければ生まれて来ません。世の中新しモノ好きですから、現在では恋愛からファンタジー・ホラー小説まですべてラノベでくくられていますが、ラノベというジャンル名称が表現しようとしているのは、本質的にはジュニア小説やヤングアダルト小説とは違う何かでしょうね。
大人向けのいわゆる大衆小説のテクニックレベルは、昔に比べると格段に上がっています。小説技術は習得しやすいわけです。風景・心理描写は緻密になり、物語の始まりにおいて読者の興味を掻き立てる、いわゆる 〝ツカミ〟 は抜群に上手くなっている。しかしその反面、小説 〝構造〟 が崩れている作品が多い。乱暴な言い方をすれば、絵の具の使い方は上手いが、結局は絵になっていない作品が増えています。でも読者は立ち読みの時は最初の方しか目を通さないので、こなれた文章でツカミが OK ならある程度売れるわけです。小説は現実世界の影響を強く受ける芸術ジャンルですから、現在の不透明な状況を敏感に言語化しながら、ほとんどの作家がその帰結を透視できていないということかもしれません。
ラノベには大人向け大衆小説のような複雑な風景・心理描写は求められていません。引き算していけば、残るのはほとんど小説構造だけということになります。現在の小説界では、緻密な描写力が作家の力量だと評価される傾向がありますが、不肖・石川は構造の方が重要だと考えます。ラノベは小説にとって最も重要な構造、つまり作家の 〝世界認識構造〟 を端的に表現できるジャンルではないかと思います。金魚屋が菜穂実さんに期待しているのもそのような小説エッセンスとしての世界認識構造のフレームなのであります。
■ 菜穂実 連載小説 『ケータイ小説!』 (第 21 回) ■