ラモーナ・ツァラヌさんの 『青い目で観る日本伝統芸能』 『 No.002 国境を越える記憶―演戯団コリペ公演 『小町風伝』 』 をアップしましたぁ。『小町風伝』 は劇作家・演出家で転形劇場主宰だった太田省吾さんの作品で、岸田國士戯曲賞を受賞した名作です。ラモーナさんが劇評しておられるのは、第 20 回 BeSeTo 演劇祭参加作品として韓国の演戯団コリぺによって上演された舞台です。演出は詩人でもあるイ・ユンテクさんです。太田さんのオリジナル版とはかなり異なる、大胆な演出がなされた舞台だったようです。
太田さんは独自の無言劇 (沈黙劇) を作り出したことで知られます。そのきっかけが 『小町風伝』 でした。『小町風伝』 は東京新宿の矢来能楽堂で初演されましたが、太田さんは能舞台が持つ独特の雰囲気に敏感に反応されたようです。ラモーナさんが 『結果として、主人公のセリフは声で発せられなくなり、老婆と若い小町を同時に演じる女優はずっと無言のまま舞台に立っているのだ』 と書いておられる通りです。60 年代にアングラ劇団は野外テントなどで芝居を上演しましたが、舞台空間自体を演劇の一部として捉える太田さんの感性が 『小町風伝』 を生み出したようです。
1977 年初演ですから、『小町風伝』 は現代戯曲の古典になりつつあります。しかしその原理を考えれば、むしろ様々に変化していっていい作品です。イ・ユンテクさんは 『あえて小町に言葉を取り戻』 したようです。ラモーナさんは 『言葉へのこだわりは繊細なところにまで及び、戯曲の詩的な美しさが見えてくるので、演出は小野小町が歌人であったことを意識しているようだ』 と書いておられます。イさんは 『小町風伝』 の本質を捉えておられたので大胆な演出ができたのではないでしょうか。
ラモーナさんのコンテンツを読むと、演劇というナマモノでは 〝演出〟 が非常に重要だということがよくわかります。これからも演劇といふ 〝事件〟 の目撃談を含む劇評、よろしくお願いしますですぅ。
■ ラモーナ・ツァラヌ 『青い目で観る日本伝統芸能』 『 No.002 国境を越える記憶―演戯団コリペ公演 『小町風伝』 』 ■