大野露井さんの連載詩篇 『空白』 『第 003 回 Ⅱ 天』 をアップしましたぁ。今回は行分け詩です。作家主体 (作品の言葉を紡ぎ出す主人公) が移動している詩篇だと措定すると、読みやすいかもしれません。天に向かって進んでいるとも、天から追放された人間を巡る詩篇とも読めますね。作品ですからほかにも様々な読解方法があると思います。あ、掲載図版も露井さんの作品です。
言語作品は本質的に保守的なので、ちょっとやそっと揺さぶりをかけてもびくともしません。『なんじゃこりゃ、わけわからん』 と感じ、ほんの少しでも読者の心に奇妙な印象を残す現代詩や前衛俳句などの作品は、相当に無茶な試みをしているわけです。大野さんの作品は、過去の現代詩的作品と比べればオーソドックスに見えるかもしれません。しかし何かが根本的に変わったと感じさせる作品です。
不肖・石川の読解ですから曖昧な言い方になってしまいますが、大野さんの作品は過去の文学的遺産をきっちり継承しながらも、文学に対する過剰な思い入れがほとんど感じられない。一言でいうと軽い。その軽さが大野さんの、ヴィジュアル表現も含めたジャンル越境的な指向に繋がっているような気がします。
なんとなくですが、時代の変化はこういふものなんぢゃないかと思います。世代って究極のところ、新しく生まれて来た人間によってしか更新されないと思います。大野さんのように、過去の人間にとっては大きな敷居を軽々と超えていく世代によって、40 代以上の作家たちは相対化されていくのでしょうね (爆)。
ほんじゃあ 40 代以上作家たちが旧世代になっていくかといふと、そうでもない。奇妙な言い方かもしれませんが、〝敷居〟 と感じる 20 世紀的な文学のアポリアを解消できれば、そういう 40 代以上作家は次世代を先取りしたことになるでしょうね。ただ大野さんのような優秀な作家が出現した以上、ほとんどの 40 代以上作家たちが旧世代に分類されていくこともまた確かだと思われます。
■ 大野露井 連載詩篇 『空白』 『第 003 回 Ⅱ 天』 pdf版 ■
■ 大野露井 連載詩篇 『空白』 『第 003 回 Ⅱ 天』 テキスト版 ■