露津まりいさんの連載サスペンス小説 『贋物師-フェイク・マスター』 (第15回) をアップしましたぁ。雲間さん、綱渡りの変装を続けてますねぇ。でも自分が扮した老人の山本にだいぶ憑依しているようです。『おかしなことに彼は、自ら扮した浮浪者の山本に同情を禁じ得ず、涙ぐむほど怒っていた』 とあります。このあたりに雲間さんの性格といふか、本質が表れているやうです。
骨董って、元々詐欺みたいなものかもしれません。いや、骨董屋さんが詐欺師だって言ってるわけぢゃありませんよ。でも 『なんでも鑑定団』 といったテレビ番組が成立するように、買い手で骨董の真贋を見極められる方は、骨董好きの中でも少ないわけでしょう。ほとんどの方が、誰かの 〝お墨付き〟 である骨董をホンモノだと思っておられる。
たとえば 『あいつは犯罪者だ、悪いヤツだ』 となにかのはずみで思い込むと、そう思っている間は自分の考えに疑問を抱かなくなるのはよくあることです。それって贋作の骨董を 『これはホンモノ間違いない』 と思い込む心理とほとんど同じですよね。骨董売買にはもしかすると、詐欺の原初型的な心理が働いているのかもしれません。
そういう意味では骨董を小道具にした小説は、詐欺モノ、サスペンスモノと非常に相性がいいかもしれません。露津さんの 『贋物師』 は後半に入ってきましたが、不肖・石川、編集者としては、こりゃシリーズモノでいけるかなっ、などと考え始めているのでありましたぁ。
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