有富千裕さんの文芸誌時評 『No.001 読楽 2013年2月号』 をアップしました。ノンフィクション作家・石井光太さんとジャーナリスト・松本仁一さんの対談を取り上げて、ノンフィクションとマスメディア・ジャーナリズムの違いについて論じておられます。不肖・石川、ノンフィクションが大好きです。事実は小説よりも奇なりというのはホントです。でも事実の方が小説を上回っている、小説よりも面白いといふ意味ではありません。
簡単に言うと事実は残酷なんですね。たとえばある人が詐欺にあったとします。小説ではその経緯や主人公を含む登場人物の心理を丹念に描きます。事件を理詰めの出来事にしていくわけです。でもたいていの場合、〝事件〟 はあっけないほど簡単に起こっている。騙す方と騙される方のパズルが一瞬で合致するような感じです。磁力で引きつけられるようにスッと事件が起こるんです。騙されている間、被害者はそれに気付いていないことも多い。現実の事件は小説に比べて残酷なほどザラザラしています。
石井さんと松本さんはノンフィクションとジャーナリズムの違いを論じておられますが、どちらも場合も言葉の行間を読む必要はあるでしょうね。ノンフィクションが事実を伝えているわけではないですし、ジャーナリズムが中立公正なわけではありません。大局的に言えば、僕らは言葉の力を信じるしかない世界に生きているわけですが、言葉は人間によって必ずある方向に誘導されています。だからフィクションである小説の方が、ノンフィクションやジャーナリズムよりもある〝真理〟を伝達できることだってあるわけです。
■ 有富千裕 文芸誌時評 『No.001 読楽 2013年2月号』 ■